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第12話
「ひとり足りない!?脱出のカウントダウン」

1998年06月20日放映


双子の父親でもあるルルドから30分の最後通牒を突きつけられたジェイナス。子供達がジェイナスから脱出する準備をする中、双子と共に部屋に篭城するシャロン。そうした中タイムリミットが経過し、ルルドの乗ったブラグはジェイナスに対し射撃を開始。しかし副官バリルが制止に入ったことでルルドは撤退、ひとまずジェイナスの危機は去る。一方シャロンのところへミルクを届けにきたカチュアは、自分の境遇と双子とをなぞらえて語る。涙乍らに訴えるカチュアに、シャロンは返す言葉を持たなかった。

ククトニアンである少女カチュア。オリジナルシリーズにおいて物語の縦軸となった彼女は、この「双子の赤ちゃん&ラピス篇」においては非常に印象の薄い存在でした。同じククトニアンである双子の赤ちゃん、そしてホルテとルービンの乗船にも関わらず、カチュアが子供達の中で唯一のククトニアンであるが故の演出はここまで全くと言っていいほどありませんでした。かろうじて第8話のラストシーンでカチュアがククトニアンであることにホルテが気付くシーンが描かれましたが、このシーンは本来シナリオになかったものを後から付与したものであり、事実その後の展開とは無関係なシーンでした。これはホルテ達「大人」と子供達の関わりを物語のメインに据えて描くことを優先したために起こった事態だと思われますが、視聴者が当然予想しうる「ククトニアン」としてのカチュアとホルテ達との接点が不自然なまでになかったことにより、ストーリー展開がギクシャクしてしまった印象は否めません。誰が見てもストーリーの本筋に絡んでくるはずのカチュアが、なかなか表立って描かれないことにやきもきした視聴者は多かったことでしょう。
しかしこの第12話、双子の赤ちゃんの処遇が話し合われる段になって、ようやく彼女が双子の赤ちゃんを巡るストーリーに絡んでくることになります。そしてそれは彼女と双子の赤ちゃんが同じククトニアンだからという理由にとどまらず、両親に会えない辛さ、会ったことがない本当の両親に一目でも会いたいという彼女の強い「願い」がもたらしたものでした。

…ククト軍のルルドによって最後通牒を突きつけられたジェイナス。ホルテは双子の父親であるルルドに対して説得を試みますが話は一向に通じません。子供達はルルドの通告に従って船から脱出するかどうかで意見が割れますが、結局キャプテンであるスコットの決断によりジェイナスから脱出する道を選択し、各自荷物をまとめに部屋に戻ります。そんな中ひとり脱出に反対し、双子を連れて部屋に篭城するシャロン。彼女はカチュアやクレアの説得にも耳を貸そうとせず、部屋の入り口に荷物を積み上げて立て篭もります。
そうした中30分のタイムリミットが経過し、ルルドの乗ったブラグはジェイナスに対し射撃を開始します。仕方なく砲座につくマキやジミー、そしてRVで出撃するロディとバーツ。しかしロディは双子の父親であるルルドを撃つことにためらいを見せます。悠然とジェイナスとRVを縫って飛びまわるルルドのブラグ、そこへ新たに副官バリルが指揮する10機のブラグ部隊が飛来します。敵の大編隊の出現に身構える子供達。ところがバリル達はジェイナスに攻撃を加えようとせず、上官であるルルドに対して攻撃の制止に入ります。「大切なご子息を殺す気ですか!?」副官であるバリルのその言葉に動揺するも、なおも攻撃を続けようとするルルド。しかし結局彼は一時退却することになり、ひとまずジェイナスの危機は去りました。

そしてこの回のクライマックスは、このルルドの退却後に用意されていました。双子とともに自室に篭城していたシャロンのもとへ、ミルクを持ってくるカチュア。彼女はシャロンに、自分の境遇を双子になぞらえて語ります。「たとえ鬼のような親でも、本当の両親なら私、逢いたい…」と涙乍らに語る彼女の言葉に対し、返す言葉をもたないシャロン。ラストシーン、展望室から宇宙空間をじっと見ているカチュア、そして双子の世話をしながらカチュアの言葉の意味をじっと考えるシャロン…これまで意固地になっていたシャロンが次の第13話でいったいどのような行動に転じるのか、期待を繋げさせる名シーンでした。そして彼女のある決断によって、「双子の赤ちゃん&ラピス篇」はいよいよクライマックスへと向かいます。

■ジェイナスから脱出することが決まった子供達が荷物を部屋に取りに行くシーンでは、ペンチが本、ケンツが武器類、そしてルチーナがいつも寝る時に抱いているクマのヌイグルミを持ち出そうとします。これはこれでそれらしい演出ですが、ジミーがここに至るもククト山羊を必死に守ろうとするのは依然違和感がないではありません…ジミー、君にとってはベルウィックの宇宙ステーションで回収したバッグの中身や、トカゲの剥製が大事じゃなかったっけ?あと彼については、砲撃シーンでの「だっだっだっだ〜」というセリフ(掛け声)も違和感が…うーん、まあいいんですけど。
■自分の息子を取るか、軍人としての任務を優先するかで心が揺れ動くルルド。そんな彼がジェイナスを攻撃しようとするのを制止しに入る副官のバリル。ルルドの部下からの人望の厚さが分かるエピソードですが、ここまでの展開の中でルルドの心理面の描写が疎かにされていただけに、あまり厚みのない薄っぺらいシーンになってしまったのは少し残念です。ルルドの行動についてはこの前後の回を見る限り到底一貫性があるとは思えず、分裂気味の行動に見えてしまう嫌いがあるのは少々気になります。実際には「任務を優先するか、私情を優先するか悩む姿を描く」という、ルルドというキャラクターの存在理由に関わる重要な描写だったと思うのですが。
■戦闘中にホルテが無重力バレルに投げ出されて失神するシーンがありましたが、単独のエピソードとしては本篇の流れに何の影響力も持たず、どのキャラを引き立てる訳でもない無意味なシーンでした(私にとっては「あ、無重力バレル健在だ」それだけのシーンでした)。どうせなら、このシーンに費やした時間をもっとルルドやシャロン、カチュアらストーリーの中心にいるキャラの描写に費やしてほしかったと思います。読みが甘いのかもしれませんが、一体何のために挿入されたシーンだったのでしょうか?首をかしげることしきりです。
■この回のBパートのBGMの選曲の拙さには正直絶句しました。ルルドと部下が退却するシーンは「ジェイナスが勝利を収めた」のではなく、スコットの言葉にあるように「よく分からないけどひとまず危機は去った」ということであり、その前にあんな勇壮なBGMを使われても困ります。その他にもバイファムらの出撃シーン、スコットが無重力バレルで失神したホルテのもとへ駆けつけるシーンなど、この回は意味不明な勇壮&能天気BGMが続出します。BGMひとつで本篇の印象ががらっと変わってしまうのですから、もう少し選曲には気を遣ってほしいものです。そんな中で唯一光っていたのはクライマックスのカチュアの独白シーン、ここで「13」屈指の名BGMである「双子の赤ちゃん!神様からの贈り物?(サントラvol.1所収)が効果的に使われていたのは特筆ものでした。
■ルルドの搭乗するARVブラグは「隊長専用機」ということでしょうか、肩の部分のカラーリングが異なります。わざわざカラーリングを変えてある割には非常に地味で、注意して見なければ分からない程度ですが、次の第13話のクライマックスシーンにおいて他のブラグと区別するための有効な演出となります。
■「あなたひとりで戦えば」というペンチの言葉に怒ったケンツが彼女の胸ぐらにつかみかかるという、ファンにとって悪夢のような光景が展開されたのはこの回のAパート中盤です。ジェイナスから脱出するかどうかというギリギリの選択を巡って子供達の意見の確執を表現したい、そういう演出上の意図は分かります。しかしそれがまさかケンツがペンチに手を出すという形で表現されるとは…。しかも仲裁に入ってケンツと掴み合いをしたフレッドがその直後(劇中の時間で僅か5〜10分後)に何事もなかったかのようにケンツと話しているというのは明らかに不自然です。オリジナルシリーズの第15話、今回と同じようにとっくみあいをしたジミーとケンツがバーツ達の仲裁にも関わらずなお納得せずに睨みあっているという、丁寧で自然な描写に比べると今回の描写はあまりにも拙いと言わざるを得ません。せめてケンツがペンチにつかみかかろうとするのを直前でフレッドが止める、という「未遂」の形にするだけで随分と印象は変わっていたと思うのですが…。このシーンのために、この第12話が私にとって二度と見たくないエピソードになってしまったのは本当に残念でなりません。

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