[TOP]



【←前の話】 【放映リスト】 【次の話→】

第13話
「絶体絶命!さらば愛しきJr.たち」

1998年06月27日放映


ルルドの退却後、応急修理をしながら今後の対策を練る子供達。逃げるために仕掛けた偽装工作も功を奏さず、再度ルルド艦の総攻撃が始まる。圧倒的な敵の攻撃に窮地に陥るジェイナス。そんな中、ルルドの乗るブラグに双子を連れて接近するシャロン。彼女の命懸けの説得でルルドは作戦を中止、双子は無事シャロンからルルドに渡された。ルルド艦はジェイナスから離れていき、ククト軍の脅威は去った。子供達を乗せてジェイナスは再び発進していくのだった。

おそらく「13」という作品は、このエピソードのために存在したのでしょう。シャロンが双子の赤ちゃんを敵であるククト軍のルルドに手渡す…クレアは言います。「私達も会えるわ…パパとママに」。そしてトイレで一人涙を流すシャロン。「13」というシリーズが子供達と赤ちゃんの交流を描くエピソードであるとするならば、この回は紛れもなくシリーズ全体のクライマックスたるエピソードであったと言えます。

…今回の物語は前の12話、ルルドが退却した直後からスタートします。母艦に帰還後、命令違反を犯した副官のバリルを叱責するルルド。しかしバリルは軍人といえども人間であり、人としての尊厳を失いたくないと主張して譲りません。バリルの主張は客観的に見た場合(ルルドが言うように)明らかに軍人に似つかわしくないものですが、ここでは任務に忠実なルルドとの対比を表すひとつの演出であると解釈しておきましょう。しかしここでのバリルの行動によってルルドはますます態度を頑なにし、補給が終わり次第ジェイナスに再攻撃を加えることをバリルに指示します。
一方危機が去った子供達はジェイナス船体の応急修理をする一方、今後の対策を練ります。ククト軍に不信感を抱くホルテがルルド艦との停戦交渉を断ったことで、ジェイナスに残された道は逃げることしかなくなってしまいます。不調のエンジンを修理するまでの間、時間稼ぎのために民間人の脱出を偽装する子供達。スコットがルルド艦に猶予を求めている間に、ロディとバーツ達が細工した無人のウェアパペット数体をラピスの小型艇に繋ぎ、自動操縦で脱出させることでルルドの目を逸らせる…という作戦を実行に移します。
しかしルルドはそんなに甘くはありませんでした。小型艇の脱出とは関係なく、ジェイナスに対するルルド艦の総攻撃が始まります。再度自ら出撃してきたルルドにRVで応戦するロディとバーツ、そしてマキ。しかし圧倒的な敵の攻撃に撤収を余儀なくされてしまい、時を同じくしてエンジンの出力が低下を始めたことでジェイナスはとうとうブラグの部隊に囲まれてしまいます。なすすべがなくなったジェイナス。まさに万事休すです。

そんな中、ARVブラグを写しだすメインモニタに写る影。それは双子の赤ちゃんを抱き、宇宙服姿でひとりジェイナスから飛び出したシャロンでした。自らに銃口を向けるルルドに彼女は語りかけます。赤ちゃんにとって敵も味方も関係ないことを。この双子が両親に抱かれるのを見ることが、自分の、そして13人全員の夢であったことを。前の第12話でカチュアの訴えに心を動かされたシャロン、その彼女が出した答えが今回極限状態で取ったこの行動でした。シャロンに抱かれたままパペットの中で笑っている赤ちゃんの姿と、ククト側のモニタに映し出された子供達だけのジェイナスのブリッジ。あくまで任務を優先して自らの子供を見殺しにしようとしていたルルドは、これらを目の当たりにしてついに作戦を中止し、コクピットハッチを開けてシャロンの前に現れます。赤ちゃんを手放すことに最後まで反対していたシャロンの手から、父親であるルルドに渡される赤ちゃん。ルルドは赤ちゃんを受け取って絶句します。離れていくシャロン、その彼女をじっと見ている赤ちゃん。彼らは無事、両親と再会することができたのでした。

そしてマイクを手に軍本部への報告を行うバリル。捕捉した地球艦には目標物が搭載されていなかったこと、同胞の民間人(=双子の赤ちゃん)を救出したことによって作戦が終了したこと。ルルド艦は任務を終え、再びジェイナスから離れていきました。
帰還後仲間に冷やかされるシャロンと、そのシャロンを気遣い、ひとりにしてあげようとするカチュア。シャロンは誰もいない洗面所で人知れず涙を流します。
こうして赤ちゃんは両親の元に戻り、ククト軍の脅威は去りました。子供達を乗せたジェイナスは再び発進していきます。

「僕たちの明日は分からない。が、少なくとも、希望は胸いっぱいに膨らんでいる」

…こうして、「双子の赤ちゃん」のエピソードは完結を迎えました。
そして、ここで興味深いのは、ここまで子供達と行動を共にしてきたホルテが、この回のエピソードにおいてまったく無力な存在であったことです。シャロンを始めとする子供達の行動を目の当たりにし、「なんて子供達なの…」と呟くしかなかったホルテ、そしてその一方、中立組織のメンバーであるにも関わらず、自らの判断で戦闘に加わる道を選択したルービン。彼女達にとっての「バイファム」の物語は、次の第14話で完結を迎えることになります。

■この回の展開は実に感動的です。それは認めます。しかし、物語の幹となるドラマに視聴者を集中させるための配慮に欠けた回であることもまた事実です。いかにも伊東氏「らしい」脚本による感動的なストーリー展開とは裏腹に、演出面や作画、細かな整合性などの面は矛盾だらけ、また本題と絡まない無意味なシーンやカットも散見されました。ストーリーが素晴らしい出来だった以上あまり細部にツッコミを入れたくはありませんが、やはり本筋のストーリーに視聴者を集中させないこれらのシーンの多さはこの第13話にとって致命的です。特にこの回の冒頭で「石板を奪うか、破壊するか、この作戦にはククトニアンの全存在と未来がかかっている」とまで言い切ったリフレイドストーンの存在を、ラストシーンであっさり放棄して空域を離脱するというストーリー無視の展開については首をひねるばかりです(むしろこの問題にどう決着をつけるかがもうひとつの見どころだったわけで、この決着のつけ方には大いに落胆しました)。
■「13」の大きな問題となっているBGMについては、今回も本篇の緊張感をブチ壊しにする選曲が散見されました。特に、赤ちゃんとの別れのシーンでのBGM「バイファムのテーマ」はああいう場面で使う曲ではありません。せっかく感動的なシーンなのですから、シーンの持つ意味合いをまるで考慮していない勘違い選曲はちょっと「???」でした。
■この回のクライマックスでは、ジェイナスの乗組員が13人の子供達だけであることをルルドが知り、驚くシーンが描かれます。しかし、第8話でもホルテが同様のリアクションをする様子が描かれており、結果的に類似のシーンが極めて短期間で2回続けて描かれるという、非常にバランスの悪いものになってしまっています。もちろんルルドのリアクションが自然なものであることは間違いないのですが、劇中で似たようなシーンを2回も、しかも2回目を物語のクライマックスで見せられると少々辛いものがあります。実際のところ、双子の赤ちゃんがジェイナスにやってきてから10話にも満たない短い間で、彼らがどれだけ赤ちゃんに愛情を抱けたか、というと非常に難しいところです。単に期間的な問題だけでなく、その間にはホルテやルービンの乗船もあり、彼らと子供達との関係はほとんど描写されなかったといっても過言ではないでしょう(第10話においても赤ちゃんを守ったのは子供達ではなくホルテでした)。それだけに、せっかくの別れのシーンにおいても、バーツの「あばよ」やロディのセリフが空回りしてしまった感があるのはちょっと残念です。シャロンがしっかり描写されていたから構わない、という見方もあるのでしょうが、せっかく名前が「ロディJr」「バーツJr」であるわけですから、彼らと赤ちゃんの別れにあたってはそれなりのシーンを見たかった気もします。
■ルルドに対してシャロンが「夢」を語るシーンは、まさにこの「双子の赤ちゃん&ラピス篇」のクライマックスであり、制作サイドのシャロンに対する思い入れが伝わってくる名シーンです。特に最初ルルドのことを「ルルド艦長」と呼んでいたシャロンが、話をするうちに「ルルドさん」という呼び方に変わっていく描写はシャロンの心理状態を表すものとして秀逸です。もっとも、この「双子の赤ちゃん&ラピス篇」全体を通して見た場合、彼女のキャラクターの中でこの行動だけが突出してしまった印象は否めません。ここでこのような役回りをするのであれば、前の第11〜12話あたりでもうちょっとそれらしい演出が欲しかった気がします。
■この回、「ああっ、やっちまった〜!」と私が嘆いたのは、双子の赤ちゃんが引き渡される際に全員が「拍手」という方法で感情を表現したこと。いくら感激の別れだったとはいえ、彼らの年齢を考えると拍手という表現方法はとらないと思うのですが…もしオリジナルシリーズの最終回、カチュアとジミーが去っていく際に子供達が拍手していたらどうなっていたでしょうか?せっかくの感動がぶち壊し。ホントにこれだけは何とかしてもらいたかったものです。
■この回のクライマックス、シャロンがルルドに「夢」を語り掛けるシーンでは音楽集の13曲目「隊長ルルド 感動!」と4曲目「MOTHER」が効果的に使われていました。特に前者はこの回のために作曲されたBGMということもあり、感動的なシーンの演出に大いに貢献していました。ちなみにこの回のサブタイトルそのままの音楽集12曲目「さらば愛しのJr.たち」は、次の第14話で使用されることになります。
■この回、これまでと少し異なった行動を見せたのはホルテでした。ククト軍に裏切られたことで露骨に不信感を表し、スコットが依頼したルルド艦との停戦交渉の役目を断るホルテ。一方ルービンはそんなホルテに反抗し、ラピスの「いかなる時も中立」という原則を破って砲座に座ります。「この状況で戦わずに命を守る方法があるなら教えてください!」とホルテに言い放つルービン。2人の性格が如実に表れたインパクトのあるシーンでした。結局敵であるルルドを信頼して行動したシャロンによって事態は打開され、ホルテは「なんて子供達なの…」と絶句することになります。そしてここでのホルテとルービンの立場の違いは、次の第14話のキーポイントとなっていきます。

[ トップページ ]