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第26話
「飛び立て13人!」

1998年10月03日放映


主翼を切り落としたシャトルを台車にセットし、カチュアとフレッドを中心にシャトル打ち上げのプログラムを組む子供達。しかしカウントダウン直前になって再びククト軍が出現。慣れない地上戦に窮地に陥るロディとバーツだが、スコット達の助けもあってロディ達はなんとかククト軍から発射台を守り抜くことに成功する。この星に残る事を決心したチェンバー夫妻に見送られてシャトルは無事発進。そして彼らはジェイナスに到着、両親の待つタウト星に向かって旅立っていった。

「13」の第2クール「旧タウト星篇」の完結篇です。この「旧タウト星篇」では新たにチェンバー夫妻というキャラクターが登場したわけですが、彼らは当然のようにこの回をもって物語から退場する必要がありました(そうでないとオリジナルシリーズの第26話に繋がらないわけですから)。
しかし、この第26話は構造的に大きな問題点を抱えていました。それは、
(1)チェンバー夫妻と子供達の別れ
(2)子供達と旧タウト星の別れ
(3)子供達と視聴者の別れ
という3つの「別れ」を僅か1話の中で描かなければならなくなってしまったことです。前の第25話でメリーと子供達(主にジミー)の別れが描かれたことにより、4つの「別れ」がダブることはかろうじて回避されましたが、これをどれだけバランスよく処理するかはこの第26話最大のポイントだったと言えます。

…主翼を切り落としたシャトルを台車にセットし、打ち上げのプログラムを組む子供達。カチュアとフレッドを中心に作業は進められます(この配役は非常に自然ですね)。一方逃げたククト兵を警戒し見張りに立つチェンバー夫妻。子供達だけでプログラムが組めるか不安がるポールでしたが、リグレーは彼らを信じるよう説得します。無事プログラミングも完了し、シミュレーションでも打ち上げ可能である事が確認できました。喜ぶ子供達。
しかしその時、前回逃走したククト兵が操る3機のARVジャーゴが姿を現します。発射台を守るために戦闘に突入するロディとバーツでしたが、バイファム・ネオファム両RVの地上での機動力のなさとビーム砲のエネルギー不足もあって窮地に陥ります。それを救ったのはスコット達のトレーラーでした。ロープで結んだドラム缶を2台の車に積み、ARVの足を絡めとって動きを止め、その間に火をつけるという方法です(生身の子供達を戦闘に参加させてしまったこと、特にジミーにバズーカを撃たせてしまったことの是非はここでは問いません)。彼らの活躍もあってロディ達は残ったARVを撃破し、なんとか発射台とシャトルを守り抜くことに成功します。

バイファムとネオファムを格納庫に積み込み、いよいよ出発しようとする子供達。しかしそんな時、チェンバー夫妻はこのままこの星に残ると言い出します。目的に向かっていく子供達の姿を見て、生きていく目的を見つけたと話すポール、彼はケンツに手作りのジャムを手渡し子供達を見送ります。シャトルは無事打ち上げに成功し、バイファムとネオファムの推進力の助けを借りてシャトルは無事ジェイナスにたどり着きます。ボギーの「みなさんのお帰りをお待ちしていました」という言葉と共に、徐々に明かりが点っていくジェイナス。そして彼らは再びブリッジに立ち、両親の待っている(はずの)タウト星に向かって旅立っていきました。

…こうして子供達は無事ジェイナスに帰艦し「旧タウト星篇」および「13」というシリーズは終わりを告げました。しかし、前述の3つの「別れ」が極めて事務的に処理されたことにより、この回のクライマックスは非常に薄っぺらいものになってしまいました(変に盛り上げようとして新挿入歌「Blue」や「Hello,VIFAM」を使用したことがますます物語としてのまとまりを欠く結果となってしまっています)。それ以前に、そもそも子供達を騙して旧タウト星に連れて来てしまったのはチェンバー夫妻その人であって、彼らが子供達を無事ジェイナスに送り返してもまだトータルには「差し引きゼロ」であるわけです。その上実際には旧タウト星にトラックを置き去りにしたり、ククト山羊のメリーと別れなければならなかったりした上、何よりも貴重な時間を浪費するなど、彼らは限りなく損失を被ることになってしまいました。この直後(に相当する)オリジナルシリーズの第27話、タウト星に到着した時点で彼らの両親が「既に収容所から連れ出された後」だったことを考えると、彼らは旧タウト星へ回り道をしてしまったがために、本来出会えるべき両親に出会うことができなかった…という解釈が成立するわけです。もしこれが旧タウト星で「その後の旅に必要不可欠な何か」をチェンバー夫妻から入手したり、人道上どうしても寄り道しなければいけない事情(例えば双子の赤ちゃんを両親に届けるとか)があったのなら話は違ったのでしょうが、「13」というシリーズの性格上そういった展開は不可能でした。この回の結末があまりにも白々しいものになってしまったことは本当に残念でなりません。

■我々ファンはオリジナルシリーズの後半、毎話戦闘シーンを描かなれればいけない…という条件が制作サイドに義務付けられたことを知っています。だからこそファンは制作サイドに同情を寄せ、子供達が武器を手にする理不尽なシーンが描かれても「まあ仕方ないか」と納得していました。もしそれを知らなければ、おそらく相当数のファンが「バイファム」の物語を途中で見捨てていたことでしょう。何より現在ククト星篇の様々なエピソードをあらためて見返してみると、スタッフがどのようにして戦闘シーンの印象を弱めようと努力していたかがよく分かります。
しかし、それから十数年が経ち、そのような諸条件がないはずの「13」最終回において我々ファンが目にしたのは、十数年前と同じように敵を倒すことによって団結を深める子供達の姿でした。容赦なく敵RVのコクピットを撃ち抜くバイファム。そしてバズーカを手にし、敵RVに火を放つジミー。この旧タウト星篇で描かれた他の戦闘シーンと異なり、この回の戦闘シーンはオリジナルシリーズのファンをも完璧に裏切る内容です。演出面に大いに問題があったあの第22話でさえ、物語の内容レベルでは決してファンを裏切っていたわけではありませんでした。それに引き換え、「最終回だから」「クライマックスだから」派手な戦闘シーン、そして共に戦うことで仲間であることを再認識する…というこの第26話の安直な発想。15年ぶりの新シリーズ「13」の最終回はオリジナルシリーズまでを冒涜する、見るに耐えない内容であったと言えます。
■最終回であるこの第26話では、ストーリーは一貫して13人相互の信頼関係を軸に進行します。仕事を分担しシャトルの打ち上げ準備をてきぱきと進める13人、ロディ達がピンチになっても「お兄ちゃんたちは負けないよ」「いつだって必ず帰ってきたもん」と呟くマルロとルチーナ、そしてロディとバーツを助けるために自分達で工夫した方法でジャーゴに立ち向かうスコット達。子供達を巡るこれらの演出は非常にバイファムらしいものだったと評価すべきでしょう。
その一方、目の前で子供達の団結と行動力を見せつけられたチェンバー夫妻が生きる目的を見出し、その胸の内を子供達に語るというシーンがありましたが、ここまでの展開で必ずしもキャラが立っていたわけではないチェンバー夫妻を使ってこのようなシーンを演出するのはあまりにも酷でした。子供達の行動によって大人達が勇気づけられるという展開は第1クールのホルテと全く同一だったわけで、どうしても見劣りしてしまうのは仕方のないところでしょう。
■第25話と同じ紫のジャーゴが今回も登場しましたが、移動の際になぜかジャンプせずテクテク歩くシーンがありました。設定や演出がどうとか言うよりも、どこかユーモラスなその姿には思わず笑ってしまいました。また、バイファムとネオファムが戦闘中にホバリングでの移動(「ガンダム」でドムがやるやつですね)をする描写があり、そのスピード感にはなかなか迫力がありました(単に絵的にそう見えただけかもしれませんが)。勿論設定がどうこうとか、もともと宇宙用であるバイファムとネオファムがどうのこうの言い出すとキリがないのですが、ここは演出優先として解釈しておきたいところです。
■最終回である今回も、全篇を通してBGMの使い方はよかったとは言えません。比較的落ち着いた雰囲気に好感が持てたAパートに引き換え、Bパートではやはりというか「Hello,VIFAM」が登場、そしてクライマックスではカットが変わるたびにBGMがころころ変わるとあっては、物語の流れまで分断されてしまったかのような印象があります(BGMには本来カットが変わっても物語の流れを繋ぎ止める効能があると思うのですが、今回はそれがまったく機能していませんでした)。マルロとルチーナが呟くシーンのBGMなど、もうひと工夫すれば非常に印象的なものになったと思われるだけに残念です。
また、初登場となった新挿入歌「Blue」についても、なにやら新しい挿入歌らしい、とようやく分かる程度の秒数しか流れず、とにかく勿体無いとしか言いようがありません。個人的にはこの回のラストシーンで「バイファムのテーマ」に替えてこの曲を使用する手もあったかと思うのですが。
■この回のBパートでは、サントラ1に収録された「総員奮戦せよ!バイファム登場!」がようやく本篇で使用されました(実際には第15話でも使用されていたのですが、この時は耳を塞ぎたくなる選曲でした)。今回はスコット達がドラム缶を搭載したトレーラーでロディ達の救援に向かうシーンでの使用です。生身の子供達が戦闘に参加することで子供達の連帯感を表現する…という稚拙な演出(※オリジナルシリーズ第38話の項参照)は正直いただけませんが、ここではBGMの使い方そのものは間違っていなかったとだけコメントしておきます。
■旧タウト星降下時にジェイナスから持ち出されたトレーラーとトラックは結局旧タウト星に置き去りにされてしまいました。ジェイナスには同じ型のトラックが複数あって、それがククト星篇で使用された…と解釈すれば別に問題はありませんが、視聴者に無用なツッコミをさせないためにもここはそのままジェイナスに持ち帰るべきでした。RVが搭載できたくらいですから決して積み込めない事はなかったと思うのですが。
■「最終回1話前に出てきたアイテムが最終回の別れの小道具として用いられる」というパターンは今回も健在でした。オリジナルシリーズでは空薬莢とハーモニカ、今回はジャム。新旧シリーズを通して見るとケンツはこの他にもルービンのネックレスやガイの鞄や何やら、いろいろ貰ってます。このパターンは脚本の星山氏の得意技であり、この回では挿入歌「Blue」の流れる中感動的な別れのシーンが演出されましたが、このパターンそのものが食傷気味であるため、少々白け気味だった感は否めません。
■前から気になっていたククト兵の扱いですが、今回も結局何の配慮も見られませんでした。3機のジャーゴのうち1機はドラム缶の燃料が引火して大爆発、もう1機はコクピットをビーム砲で貫かれ…とあまりにも不憫な結末でした。これらのジャーゴのパイロットは第24話で落とし穴に落ちたククト兵であるわけで、生身で劇中に登場している以上はせめてコクピット以外の部分を撃ち抜いて行動不能にするとか、何か配慮はできなかったのでしょうか。非常に残念なところです。
■ポールと別れる際のケンツの最後の一言「腹こわすなよ〜!」はケンツの「照れ」を表したセリフとして秀逸です。おそらく彼はポールに心を許したことを認めたくないのでしょう。彼らしいセリフとして光るものでした。またその後の「必ず両親に会えよ、子供達」というポールのセリフはこの「13」の第2話でローデン大佐が呟いたセリフと全く同一のものです。子供達を見送るシチュエーションの相似といい、このセリフについては脚本の星山氏によって意図的に用意されたと解釈するのが正しいところでしょう。
■宇宙へ飛び立っていくシャトルを見上げるメリーのカットは名シーンでした。思えばこのようなハッとさせられるシーンが「13」にはあまりにも少なすぎた訳ですが、最終回のこのカットを持ってよしとしたいところです。
■BGM「バイファムのテーマ」が流れる中ジェイナスが去っていくというラストシーンはオリジナルシリーズ以来あまりにも見慣れたシーン。今回も例に漏れずこのパターンでしたが、ラストの映像はよりによって第14話のフィルムの使い回し。別に雰囲気が合ってないとかいう訳じゃないんですが、最終回なだけにもう少し何とかならなかったのかという気はします。何よりエンドマークもナレーションもない状態では、このあとタウト星に向かった子供達がどうなったのかさっぱり分からず、「13」というシリーズで初めてバイファムという物語に触れた視聴者に「?」を植え付ける結果となってしまったのは残念です。


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