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第25話
「大ピンチ!!最後のチャンスにかけろ!」

1998年09月26日放映


ポールは最後の手段として、資材運搬用の発射台でカーゴを打ち上げることを考え付く。シャトルをカーゴの代用とし、台座に載せて打ち上げる準備を進める子供達。そんな時出現したククト軍とARVによりマキ達が人質に取られるが、テスト射出された台座が偶然近くに落下したことで彼らはなんとか難を逃れた。そしてジミーはメリーをククト山羊の群れへ返すことを決意。ケンツの励ましでジミーは笑顔を取り戻し、彼らの出発はようやく間近に迫ってきた。

「ジミー・エリル=ヤギの世話係り」。「13」のシナリオの巻頭に書かれたキャラクター紹介にはこのような一文があります。この説明の是非はともかく、「13」での彼はまさしく「ヤギ」ことククト山羊メリーの存在によって振り回されることになりました。彼が何故ヤギの面倒を見るのかということについては第9話で彼自身が「誰かが世話しなくちゃいけないでしょう」と語っているわけですが、視聴者はもっと彼の性格にまで踏み込んだ理由付けがほしかったわけです。ジミーは自分の両親がこの世にいないことを(おそらくこの時点で既に)知っています。だからこそ彼はククト山羊であるメリーを慈しみ、彼女に対して家族であるかのように愛情を注ぐのだろう…などといった背景が示唆されていれば、おそらく彼とメリーの関係はもっと視聴者に認められるものになっていたと思うのですが、この回彼がメリーに見せるのは愛情と言うよりも単なる「執着」です。言ってみれば「山羊フェチ」。そう取られても仕方のない、まるで彼は本能の部分でメリーが好きであるかのような考え方が見え隠れします。そしてその考え方は、彼らの別れを描いたこの第25話でも(悪い意味で)最大限に発揮されることになります。

…せっかく手に入れた輸送機をケンツが墜落させてしまったことで、再び宇宙へ飛び立つ方法を見失った子供達。落ち込む彼らの横で、ポールは旧タウト星の開拓時に使用されていた資材運搬用のロケット発射台を使い、カーゴを打ち上げることを考え付きます。早速発射台のある古い基地へ向かう子供達。施設は整備することでなんとか使うことができそうですが、カーゴそのものは物資運搬用のものばかりで人が乗ることができません。そこで子供達は以前離陸を試みて壊れてしまったシャトルをカーゴの代りに用い、台座に載せて打ち上げる計画を立てます。
早速フレッドが中心となってカーゴの台座の整備が行なわれることになります。それを手伝おうとするポールでしたが、前回輸送機を墜落させていることで子供たちから敬遠され、妻リグレーにも相手にされない始末。同じく輪から外れているケンツと2人で空を見上げて落ち込むポール。なにやらこの2人、ここにきて名コンビの様相を呈してきました。
一方その頃バーツとロディ、そしてマキ達は壊れたシャトルを基地に運ぶために湿地帯に向かっていました。彼らに同行しているジミーは、目の前に仲間であるククト山羊の群れを見つけてその中に戻っていこうとするメリーをなんとか引きとどめようと必死です。メリーを追って仲間から離れたところに来てしまったジミー、それを追うカチュア。

そこへ突如、前回輸送機を奪われたククト兵達が操る2機のRVが出現します。追われるジミーとカチュアを助けるため、RVで戦闘状態に突入するロディとバーツ。身軽な敵RVに苦戦するロディ達の横で、マキとシャロンはジミー達を助けようとしてトラックを走らせます。しかし、岩場に身を潜めるマキ達4人の背後から現れた2人のククト兵によって彼女達は人質に取られてしまいます。絶体絶命のピンチに陥るロディとバーツ。
それとほぼ同時刻、基地ではケンツの発案により、整備が終わった発射台を使ってカーゴの打ち上げテストが行われることになりました。無人のカーゴは無事打ち上げに成功し、切り離された台座は地上に落下していきます。ロディ達に銃口を向ける敵RVのすぐ背後に墜落し、大爆発する台座。敵RVがそれに気を取られた一瞬の隙を突き、ロディとバーツはこれを撃破。その音に驚いて走り出したククト山羊の群れに紛れることで、マキ達もなんとか難を逃れることができました。
そしていよいよ彼らの出発が間近に迫ってきました。ジミーはそんな中、メリーをククト山羊の群れへ返すことを決心します。メリーの首につけたロープをほどいてやるジミー、彼は立ち去ろうとしないメリーを自ら追い払った後、帽子で顔を隠して人知れず涙を流します。基地へ戻っても元気のない彼を励ますケンツ。彼の言葉によって、ジミーはようやく笑顔を取り戻すのでした。

…何はともあれ、第1クールで登場した新キャラクターの中で唯一ここまで子供達と行動を共にしてきたメリーがここで一行から別れることになりました。そして様々な物議を醸した旧タウト星篇の物語は、いよいよフィナーレへと向かいます。

■前回のラストで輸送機を墜落させたことにより落ち込んでいるケンツの描写と、仲間のもとへ戻ろうとするメリーをめぐるジミーの描写。並行して描かれるこれら2つの物語がラストシーンで一本にまとまるという綿密に練られたストーリー展開は、個々のキャラの動きも含めて十分納得がいく内容でした。異常なまでにメリーに執着するジミーの描写はかなり極端ですが、ラストシーンで自らメリーを追い払った後帽子で顔を隠して涙を流す彼の姿、そして落ち込んでいる彼を励ますケンツとのやりとりは非常に印象的なものでした。個人的には、仲間と共に去っていくメリーには一度でいいからジミーのほうを振り向いてほしかったんですが、このあたりは好みの問題でしょう。
■ジミーの異様なまでのメリーへの執着は、この回「走るメリーに岩の上からダイビング」というおおよそ考えられない形で描かれます。メリーは「13」で初めて登場したキャラクターでありますが、第1クールでの活躍といい、彼女が登場したこと自体にケチをつける気は毛頭ありません(むしろ個人的には、オリジナルシリーズで彼女のようなキャラクターが船内にいれば、また面白いエピソードが成立していたかもしれなかったと思います)。しかし、彼女の登場によってジミーの性格描写がおかしくなってしまったことについては「残念」としか言いようがありません。彼にとってメリーは心の拠り所なのでしょうが、だからといって非人間的な行動に走ったり、仲間の存在を忘れたりするようなことはしないはずです。前述の通り「13」のシナリオ巻頭に印刷されているキャラクターの紹介コメントには「ジミー・エリル=ヤギの世話係り」という意味不明な一文が掲載されているのですが、この一文によって「13」における彼のキャラクターがひん曲がってしまったような気がして仕方ありません。
■前回落とし穴に落とされたククト兵が今回再登場。「ロエマカッツ」や「テタ!」「(銃を)ロステ!」など、例によって非常に分かりやすいククト語を披露していました。このへんはシリアスとは程遠い演出ですが、ファンにとっては「うんうん」と頷かされる描写であり、ある種のお約束として好意的に解釈しておきたいところです。
■パンを食べるポールが取り出したジャムはオリジナルシリーズ第39話でジミーが作っていたものとそっくり。勿論直接のつながりはありませんが、ワンポイントとしてはグッドでした。劇中の時間軸ではこの後の出来事に相当する「ジミーのジャム作り」はここが伏線だったのか、と思わせるシーンです。レッドベアのマークをブタと評したポールにムキになって反論するケンツもなかなか愉快でした。
■穴に転落したトラックから思い切り車外に放り出されてなんともないマキとシャロン、爆風で飛ばされてもかすり傷ひとつないカチュアとジミー。うーん、きみたち人間とは思えないね。
■今回はノーマルとカラーリングの異なる紫色のジャーゴが登場し、シャトルを取りに来たバイファム、ネオファムと一戦を交えました。もともと独特な動きをする機体だけに作画をする側からすると描くのが難しいメカだと思うのですが、今回はアクションが派手で、不気味な機体色とあいまって非常にいい味を出していました。
■この第25話、敵であるククト兵の劇中での扱いにはやはり納得がいかない部分があります。彼らはもともと行方不明になった自軍の偵察機の捜索に来ただけで、そういう意味であまりにも可哀相。何ら主張の場がない彼らの扱いについては個人的にいまいち納得がいかないです。あと、マキたちが人質に取られていながらスキを見てジャーゴを撃破するロディ達の行動もよく考えるとおかしいのですが、こちらは「偶然ジャーゴの近くに台座が墜落する」というシチュエーションがユニークだったこともありますし、敢えて突っ込まないでおきましょう。


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