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第39話
「包囲網を破れ!」

1984年7月21日放映


別の収容所に向けて旅をする子供達はとある町の廃墟でキャンプを張ることになる。そこでスコットはふとしたことでクレアの誤解を買ってしまうが、バーツとロディが間に入り事無きを得る。その翌朝追撃してきたミューラアがキャンプ地を急襲し、そこにガンテツの部隊もが加わって総攻撃をかけてきたことで子供達は最大のピンチを迎える。しかしそこへリベラリストのジェダが指揮するRV部隊が到着。ガンテツ隊は全滅し、RVを破壊されたミューラアは捕えられる。彼はバイファムから降りてきたロディが子供であることに愕然とするのだった。

タウト星から脱出したジェダがククト星に基地を構えて着々と体勢を整えつつあることは第34話で明らかになっており、ククト星に降り立った13人が彼と再合流することは視聴者にとって予測可能な展開でした。問題はそれがいつ、どのような形であるかということだけであり、インターミッション的エピソードだった第35〜38話(ククト少年少女4人組篇)が終わったこの回のラストでようやくジェダと子供たちの再会が実現することになります。そしてこの回ではミューラアが捕虜となり、ロディ・カチュアと対話可能な距離に身を置いたことによって物語はいよいよ「ミューラアとカチュアの接触〜カチュアの意思決定」という重要な局面を迎えることになります。この第39話はそういった意味で物語の「大いなる転換点」であると言えそうです。

ガイに貰ったククト星の地図をもとに地球人のいるらしい収容所へ向かう13人。彼らは途中で発見したオアシスに立ち寄り、束の間の休息を取ります。噴水ではしゃぐ子供たち。しかしまだ目指す収容所までは半分しか来ていません。一方ミューラアは彼らのトラックの通過跡を確認し、彼らまで間近に迫ったことを知ります。追撃に出発するミューラアの部隊。
そんな中、子供達のキャンプでひとつの事件が起こります。クレアが悲鳴をあげて倒れてしまったのです。倒れた彼女の胸元には真っ赤な「血」らしきものが。あわてて彼女に駆け寄り傷口を確認しようとするスコット(どうして傷口を確かめるために胸元に手を入れるんだ?というツッコミはなし)。しかし実はそれはジミーの持っていたジャムの栓がクレアの胸に命中しただけで、彼女は無傷でした。その場では笑い話で済んだものの、胸元に手を入れられたクレアはスコットに対して複雑な表情を浮かべます。これがのちの事件の発端でした。
その夜のこと。スコットは成り行きで鞄の中にあるコンパスをクレアに取って来てくれるよう頼みます。しかし彼はある重大なことを失念していました。そう、彼の鞄の中には例の「エロ本」が隠されていたのです。大慌てで走り出すスコット。しかし、コンパスを手に戻ってきたクレアはよそよそしい態度でスコットに接し、彼を避けるように立ち去るのでした。

…とまあ、路線としては「あの」第21話の延長線上にあるこのエピソードなのですが、あくまで「スコット・ロディ・バーツ+シャロン」ら内々のグループで話が収まった前回と異なり、今回は潔癖症の代表格とも言えるクレアが直接的にこのエピソードに介入してきます。前回はエロ本という「未知のアイテム」に対するスコットの反応がポイントだったわけですが、今回はクレアがその役目を担うわけです。エロ本を隠し持っていたスコットを軽蔑するクレア。その直前の事件も悪い方向に作用し、クレアは完全にスコットを誤解してしまいます。あわてて仲介に入ろうとするバーツとロディ。バーツの説得によってクレアはなんとか彼を許す気になります(このへんのやりとりは文章で書いても面白くも何ともないのですが、各キャラの演技と表情が大きなポイントです。鳥海さんら声優の方々の熱演に拍手)。ようやく気持ちを落ち着かせたクレアは「スコットがあんなものに興味持つ訳ないものね」口走り、バーツとロディは顔を引きつらせます(このへんのシーンはもう完全にギャグ)。その後のシャロンとペンチの会話を含め、このへんの反応は各キャラの個性が出ていて非常に面白いです。

夜が明ける頃、バーツから借りたビームガンを撃ってストレスの発散をするクレア。そこにミューラアの部隊が襲来します。あわてて出動するロディ達。しかし5機という敵機の数にロディ達は苦戦します。さらにそこに現れたのがロード・ガンテツ少佐率いる「ククト軍第3特務部隊」。子供達は追い詰められ、ロディのバイファムはミューラア操るデュラッヘの前に絶体絶命の危機を迎えます。
その時デュラッヘを貫く一条のビーム。彼らを包囲していたのはジェダが指揮するARVギャドルの大部隊でした。ガンテツ隊は撃破され、子供達は九死に一生を得ます。ジェダとの再会に喜ぶ子供たち。捕えられたミューラアはバイファムから降りてきたロディが子供であることに愕然とします。彼が捕虜になったことで13人と彼に接点が生まれ、そして物語は新たな方向に進んでいくのでした。

■この回は単独のエピソードとして見た場合は前後の第38話や第41話の陰に隠れてしまいがちですが、第21話に引き続き再度登場してしまったエロ本ネタ、タウト星でロディを助けた反政府軍ゲリラのジェダの再登場、そして大トリではガンテツが指揮するARVディゾ&ディロムの部隊の登場と細かい話題に事欠かない回です。最終回までのストーリー展開を考え、このへんでいわゆる「おちゃらけ」エピソードを挿入して物語がシリアスに偏るのを防ごう、という制作側の意図が見え隠れしているように思われます。もっともそのキーとなったのが視聴者に確実にウケる「エロ本」というネタだったことについては少々安直な気もしますが、前回(第21話)のエロ本騒動に絡んでいなかったクレアを前面に出すことによってきちんと前回と差別化を図っているのはさすがです(もっともそれはこの回だけで、その後の第44話でのエロ本ネタは明らかに食傷気味でしたが)。
■ジャムのついた自分の手のひらを見つめ、歯をキラーンと輝かせるスコット。ヤバいです。イッてます。完全にイッちゃってます。このシーンは第21話という「緩衝材」があったからこそできたシーンであり、そうでなかったらヤバい演出だったでしょうねぇ、マジで。ただしスコットというキャラクターを考えるとこの回がその後のOVA〜「13」のスコットに繋がるきっかけだったような気がしてなりません。そういう意味ではこの回のスコットの描写は彼自身にとって大きな転機となったのではないでしょうか。
■この回のゲストキャラであるガンテツはキャラ設定表の存在しない謎のキャラクターで、当時のアニメ誌の別冊でも資料を載せているのはアニメディア別冊2くらいです。そのアニメディアにしても原画から複写した画像であり、おかげで?ファンの間で長く印象に残るキャラクターとなりました(彼の登場にあたってのやりとりは「アニメディア別冊」のスタッフインタビューが詳しいです。必要のないキャラを物語中に挿入せざるを得なかったスタッフの方々の気苦労が忍ばれます)。ちなみにキャラクターボイスは加藤治氏。妙ななまり方がなぜか耳に残ります。
■ガンテツ少佐率いる部隊の主力メカ、変形RVディゾとその支援RVディロムはスポンサーであるバンダイの意向が色濃く反映されたメカです(要するに「変形するRVを登場させろ」というお達しだったのでしょう)。ガンテツというキャラを登場させることによりスポンサーの意向をある意味きちんと作品内で消化させたスタッフには恐れ入りますが、結局ディゾとディロムはプラモ化されることはなく、ストーリー展開上この上なく「わけのわからないキャラ&メカ」となってしまいました。この時期バイファムという物語が一見マトモにストーリー展開をしているようでありながら、ウラではいろいろな制約のおかげで破綻しかけていた象徴的なエピソードだと言えるでしょう。


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