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第36話
「収容所に向かえ!」

1984年06月30日放映


食事のお礼に森や川へ食べ物を探しに行ったククトニアンの子供達。そこで滝に落ちそうになったユウをロディが救助したことで彼らに友情が芽生える。身振り手振りで会話を試みたところ、どうやら彼ら4人組も両親に会うために旅をしているらしいことが分かった。彼らの地図にある収容所を目指して共に旅を続ける子供達。途中襲ってきた敵のRVも力を合わせて撃退し、彼らはようやく目指す収容所にたどり着いた。そこに地球人の姿はなかったものの、ガイ達の両親が中で働かされていることが判明した。

第35話から始まった「ククトニアン少年少女篇」の2話目。このインターミッション的エピソードの起承転結で言うと「承」に相当し、ククトニアンの子供達と13人の交流がメインとなるエピソードです。

ひょんなことから13人に合流したククトニアンの少年少女4人組。前の第35話のラストでは泣きじゃくっていた彼らですが、この回の冒頭では落ち着いた様子できちんと食事をさせてもらっています。合流してからここまでどれぐらいの日数がたっているのかは不明ですが、彼らは彼らなりに13人と行動を共にしていることに馴染んできているようです。とはいえ言葉が通じない以上、彼らの真意は13人には分からないままです。おかわりを差し出すカチュアを制止するものの、逆に反発を受けて彼らに謝らざるを得なくなるスコット。
食事が終わってしばらくうとうとしていた4人組ですが、ちょっと目を離した隙に姿を消します。食い逃げだと騒ぐシャロン。しかし彼らは逃げ出したのではなく、食事のお礼に森に食料を取りに出かけていたのでした。木の実を集めるガイ達と、川で魚を釣るユウ。その時ユウの針にかかった大きな魚が彼を川の中に引きずり込んでしまいます。彼の悲鳴を聞きつけて川に飛び込むロディ。残るガイ・ケイ・メルの協力もあって、ユウとロディは九死に一生を得ます。弟を助けてもらったことで、「スクンサ…」とロディに抱きつき感謝するガイ。彼らの間に信頼関係が芽生えたシーンでした。
その夜、劇によってガイ達4人に自分達の行動の目的を説明するロディ達。彼らの目的を理解したガイが取り出したのは収容所と思われる施設が記入されている電子地図でした。目的地が決まり歓声を上げる子供達。彼ら17人は青空の下、収容所に向かって出発します。休憩地点でARVに急襲され橋から落ちそうになるというアクシデントもありましたが、ガイ達の機転によって彼らはなんとか窮地を脱することができました。「スクンサ」を合言葉に、いっそう連帯を深める子供達。

…この回は本放送当時も非常に印象に残ったエピソードでしたが、十数年経った今見直すと当時抱いたイメージとはまた違った、ある種の「懐かしさ」を感じさせます。それは一体何か。それは、この回描かれたシチュエーションが私達が子供の頃楽しみにしていた「合宿旅行」や「キャンプ」に非常に近いからではないでしょうか。インターミッション的エピソードであるこの第36話で描かれたエピソードの内容はまさしく「キャンプ」そのものでした。美しい自然の中で力を合わせて魚を釣り、食事をし、昼寝をし、役割分担しての夜劇で交流を深める。それに加え立ちションでの連帯感、果てには見張り当番での異性とのアクシデントなんてのもあります。そしてこれらを包括する形でこの回の象徴と言えるのが初登場となる挿入歌「君はス・テ・キ」でした。この第36話が印象的なエピソードであったのは、私達視聴者に「自分達も一緒に旅をしたい」と思わせるのに十分な、これらの数々の名演出に支えられていたからではないかと思います。

■ククト星といえば何かと荒野が広がっている星という印象がありますが、この第36話に関しては美しい緑がひとつの見どころです。キャンプを張った場所が川辺だったということもあり、光が反射する水面、森の木々、草原、そして「君はス・テ・キ」が流れるシーンでの美しい空も見逃せません。
■溺れかけたユウを助けるために川に飛び込むロディを見ていると、シリーズ後半の彼の成長を感じずにはいられません。自らの危険を顧みず仲間を助けに走るという彼のポリシーは第41話「カチュアを撃つな!」においても発揮されています。またこのシーンでのロディはジミーにもらった毛布に一旦はくるまっておきながら、魚に引きずられるケンツを助けるためにすぐ毛布を脱ぎ捨てて走り出す、という行動を見せます。これもある意味ロディらしい快活さですね。
■突如出現したARV(ジャーゴが久々の登場!)に落とされかけた橋を何とかジープで渡ろうとする子供達、そしてそれに協力するククトニアンの子供達の行動は手に汗握るシーンです。バイファムにはこのような「時間との戦い」的なエピソードがほとんどなく、その意味でもこの第36話はバイファムという物語において貴重な存在であると言えます。
■4人だけになったシーンで急に地球語(日本語ですね)を喋り出したガイ達には正直ビックリしました。やむを得ない演出である事は十分理解できるのですが、いきなり地球語を喋り出されては面食らうばかりか、ひょっとすると地球語を喋れるのに13人と一緒にいる時は警戒するあまり喋れないふりをしているのか?と邪知してしまいます。視聴者はあくまで13人の側の視点に立って物語に参加していることは明らかなわけですから、ここはもう少し演出方法を検討すべきだったのではないか、と思います。あと、メルにセリフがなかったのは残念でしたね。
■この回のカップル描写はフレッドとペンチ。ひとり崖の上で監視当番をしているフレッドのところにペンチがスープを持ってきて、そのまま一緒に毛布に包まる…という大胆なシチュエーションです。ククト星篇で描かれるカップル描写はほとんどが遠まわしな表現であるわけですが、彼らについてはちょっと例外であるようです。もっとも彼ら2人はこの第35〜38話においては完全に脇役となってしまい、このくらいやらなければ存在が忘れられてしまう、という事情もあったわけですが…。
■この回は細かいセリフ回しが絶妙です。バイファム劇中の名セリフの特長として「ひとつの長いセリフではなく短いセリフの掛け合いが効果的である」という傾向がありますが、この回のセリフはその極致です。ジミーの「止まんないよ〜」やケンツの「あたたた挟んじゃったよ」、そしてシャロンの「俺も欲しいな、ひとつ」「ションベンタイム了解」などの細かいセリフがいずれも絶妙の味を醸し出しています。
■Bパート冒頭、4人組が13人と同じテーブルについて食事をしているシーンがあります。あまりに自然すぎて何の違和感も持たないのですが、冒頭で別々に食事をしていたことを考えると彼らの心理的距離が縮まったことを表す演出として注目したいところです。
■「パパとママに会いたい」という意味のユウの言葉「チャンカア、ソドニタイアイ」は第28話でカチュアが言った台詞と同じもの。単純に同じセリフを用いたというだけではなく、彼らが13人と同じ目的で旅をしていることが効果的に示唆されています。
■この回は挿入歌「君はス・テ・キ」が初めて使用された回でもあります。「君はス・テ・キ」はこの後第38話、そして最終回と使用されますが、この回でのシーンが最も印象に残っているというファンは多いのではないでしょうか。
■ベルウィック星篇で登場していたARVジャーゴがこの回久々に登場。この回登場した部隊がミューラアと別働隊だったことを明示するための演出だったのでしょうが、ARVと言えばしばらくギブルばかりの登場だったこともあって非常に新鮮に見えます(ベルウィック星篇でスタジオライブのスタッフの方々がジャーゴを描き慣れていたことがこの回の登場に結びついたのかもしれませんね)。それにしても、ジミーに小便をひっかけられた上であっさり倒されるとはあまりにも可哀相。


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