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銀河漂流バイファム13
24
残された道 輸送機を奪い取れ!

1998年9月19日放映


子供達がジェイナスに戻るのを手助けすると約束したポールはククト軍の輸送機を奪う計画を立てる。故障で不時着したことを装ってポールがククト軍に救助を要請し、落とし穴でククト兵を捕まえた上で乗ってきた輸送機だけを無傷で強奪するのである。ククト軍の将校に変装したポールとディグレの活躍により、彼らは見事輸送機を奪うことに成功。しかし子供達が大喜びしたのもつかの間、せっかく手に入れた輸送艇は試運転中に墜落、大破してしまった。

旧タウトの森の中で野営を続ける子供達。彼らがジェイナスに戻るのを手助けすると約束したポールは、ディグレの案をもとにククト軍の輸送機を奪う計画を立てます。ポールが故障で不時着したことを装ってククト軍に救助を要請し、罠を張ってククト兵を捕まえた上で彼らが乗ってきた輸送機だけを無傷で強奪する作戦です。バイファムとネオファムを使い、廃虚となった研究所の前にククト兵を捕まえるための大きな落とし穴を掘るロディとバーツ。一方ポールの指示で通信機の修理を完了させるケンツですが、直った途端ククト軍が捜索のために既に本星を出発していることが判明します。大急ぎで落とし穴を完成させて森に隠れる子供達、そしてポールはククト軍の将校に変装してククト兵をおびき出します。ディグレの思わぬ活躍もあって数名のククト兵が落とし穴によって捕えられ、輸送艇のコクピットに残っていたパイロットもケンツとポールによって捕虜となります。思惑通りに輸送機を手に入れたことで、「これでジェイナスに戻れる」と大喜びする子供達。しかしその喜びもつかの間、せっかく手に入れた輸送艇はポールとケンツが試運転をしている最中に墜落し、彼らの目前で大破してしまいました。期待が大きかっただけにうなだれてしまう子供達…。

■今回はキャラごとの細かい演出が非常に冴えていました。ジミーの作ったカエル料理を見て「おいしそう」と呟くペンチにギョッとするフレッド、行儀のいい子供達の中でひとり寝そべって食事するシャロン、ネオファムに持たせた木の枝をホウキ代わりに使って落とし穴の仕上げをするバーツ、そして囮役になるポールの身を案じたケンツが彼に小銃を渡すところなど、脚本、演出、作画すべてが冴えわたっていました(ちなみに今回の話は冒頭からケンツの行動を中心に進行し、彼とポールが徐々に名コンビになっていく様子が丹念に描かれています)。おそらく些細な箇所を除き今回の13人の個性あふれる動きに文句をつける視聴者は多分いないでしょう(下に続く)。
■(続き)にもかかわらず話の印象があまりにも薄いのは、ひとえに結末のあっけなさによります。番組冒頭から20分かけてようやく手に入れた輸送艇がラスト2分であっけなく(しかもさしたる明確な理由なしで)墜落してしまうという度肝を抜く展開。ここまで中身のないストーリー展開だと、脚本や演出がどうとか言うのではなくてシリーズ構成そのものを疑いたくなってきます。『24話→チェンバー夫妻と13人が協力してククト軍の輸送機を手に入れるが、結局試験飛行中に墜落』という筋書きを忠実に組み立てた(←皮肉ですよ)だけの今回の話。おそらく今回捕虜になったククト兵は今後の展開に絡んでくるはずですが、それ以外の部分でこの24話はストーリー上存在しなくてもいい話になるはずです。いずれにせよ今回のラストシーン、視聴者が劇中のスコットと揃って卒倒してしまったことは想像に難くないところです(苦笑)。
■作戦を立てる際、「(ククト兵を捕まえるよりは)やっつけちゃったほうがいい」と主張するケンツ。彼の意見を退けるマキやポール達ですが、その理由は「戦闘になったら輸送機が壊れるかもしれないから」という単純きわまりないもの。どうしてそこで「ククト兵にも家族がいるはず、輸送機を奪うためだけにむやみに殺すべきではない」というセリフが言えないんでしょうか…。前回の23話でもxu23a1機とジャーゴ2機があっさり撃破されてますし、ククト兵を殺すことを何とも思っていない子供達の描写にはいささか不満があります。前回チェンバー夫妻と息子のアランが戦争の犠牲者であるという演出があったように、バイファム世界では「みんな戦争の犠牲者である」という描写が大原則だったはず。この観点からすると今回のエピソードを始めとして、「親に会うためなら問答無用」という新作での子供達の行動には違和感を感じずにはいられません。まあ、今に始まったことじゃないんですけどね。
■先に挙げた子供達の描写以外にも、10倍程度の身長差があるネオファムとスコットが同一画面で描かれる箇所(落とし穴に落ちそうになるネオファムを観てスコットが大慌てするシーン)やディグレがククト兵にキックをあびせるカットなど、どちらかというとバイファム本編では(いい意味で)異質な、これまで見られなかった構図のカットがたくさんありました。これらの部分は率直に作画もしくは絵コンテ段階でのスタッフのこだわりが感じられ、観ていても飽きがきませんでした。また物語の中で随所に挿入される旧タウトの美しい自然も非常に印象的で、これらのシーンがあることで本編がより引き締まっていたように思います。
■落とし穴と変装だけの準備であっさり実行に移されてしまう輸送機強奪作戦。13人の中でこの作戦の準備に絡むのはケンツ以外ではロディとバーツだけ、しかもその2人も作戦が始まった後は森の中から見守っているだけでした。とんでもなく唐突なこの展開、中盤ロディが口にした「(作戦が)たしかに大雑把すぎて不安」というセリフは、ひょっとすると番組を制作しているスタッフ自身の率直な(自戒的な)思いだったのではないでしょうか。また前回の23話で破壊され放置されている汎用艇の残骸の処理をめぐっての会話も、視聴者のツッコミをそらすためだけに用意された意味のないシーンでした。結局放置したままにするのならわざわざ大騒ぎせずに、最初から無視すればいいのに。
■旧作〜新作を通じ「アストロゲーターの操る未確認飛行物体」として得体の知れない雰囲気を醸し出してきたククト軍の汎用艇(劇中では輸送機)=xu23aですが、今回は新設定のランディングギアで着陸した上でハッチがオープン、しかもコクピット内の描写までありました。いや、別にいいんですけど、あまりにも違和感が…ケンツが試運転するというのもちょっとね。
■アバンタイトル、また同じ音楽でした。内容もただダラダラと本編の一部を流しているだけ。作るのをやめてしまってはいかがでしょうか(もう遅いけど)。

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