[TOP]



【←前の話】 【放映リスト】 【次の話→】

第18話
「ボギー制御不能!浮遊機雷の恐怖」

1998年08月01日放映


度重なるボギーのミスに不信感を募らせる子供達。独自に原因追求に取りかかるカチュア。一方しびれを切らしたスコットはボギーをブリッジから切り離してしまうが、そんなジェイナスの前に浮遊機雷群が出現。ロディ達は機雷群から脱出するために無人ロケットを囮に使い、その間に機雷のセンサー本体を破壊しようと試みる。作戦は無事成功し、機雷は動きを停止。ボギーの不調はスコットのデータ入力ミスだったことも判明し、ボギーはようやく正常に戻った。

4話にわたる短篇競作、「ボギー不調篇」のラストを飾るエピソードです。度重なるボギーの不調によってトラブルが多発するジェイナス、そして彼女?を懸命に直そうとするカチュアの活躍がメインとなります。マルロとルチーナが冒頭で遊んでいた「ダルマさんが転んだ」が終盤の浮遊機雷除去の展開につながっていくというユニークな仕掛けは、脚本の平野氏の面目躍如といったところでしょうか。13人のそれぞれの立場での奮闘ぶりを描いた構成は、オリジナルシリーズの第2クール、「銀河漂流篇」を髣髴とさせる内容です。

…ボギーが不調になって2週間。スコットはたび重なるボギーのミスにイライラを募らせていました。いちどはカチュアになだめられて落ち着きを取り戻していたスコットですが、その直後に食堂で火災警報の誤作動騒ぎが起こり、スコットをはじめとする子供達はミスが続くボギーを責める言葉を口にします。
そんな彼らの前でカチュアは珍しく感情をあらわにし、彼らが集まっていた食堂から出て行ってしまいます。カチュアが「寝る間も惜しんで」ボギーの整備をしていたことをフレッドから知らされる一同。ロディとフレッドは彼女を手伝い、ボギーのハード面の不調の原因の探り出しを始めることになります。
一方、存在するはずのない小天体群の警告を続けるボギーに対して堪忍袋の緒が切れたスコットは、ついにボギーのシステムをブリッジから切り離してしまいます。自動航行をやめ、手動で航海を始めるジェイナス。時を同じくしてハード面でのボギーの故障はロディ達によって解消されましたが、依然ボギーの誤作動はなくなりません。

そんなジェイナスの前に出現した謎の浮遊物体。それはボギーが「小天体群」と警告していた、ククト軍のものと思われる浮遊機雷の群れでした。ボギーの警告は間違っていなかったのです。動く物体に反応する性質を持ったこの機雷群は、出撃したバイファムやネオファム、そしてジェイナスにじりじりと接近します。ついには取り囲まれ動けなくなるジェイナス。子供達は囮となる無人ロケット(デコイ)を発射し、機雷がそれに追随している間に機雷のセンサー本体(劇中では「動体指示システム」)を破壊する作戦を立てます。マキらの援護によってロディとバーツはセンサー本体の破壊に成功し、彼らを追尾していた機雷は動きを停止。その間にジェイナスは無事機雷群から脱出することに成功しました。ボギーのソフト的な不調は英数字の「L」の小文字と数字の1を間違って入力したスコットのミスであることが判明し、事件は一件落着します。
そしてボギーによってようやく本来の自動航行に戻ったジェイナスは、目前に迫ったタウト星に接近していくのでした…。

…と、この第18話では、 ようやくボギーが復旧し、子供達の航海の上での障害はなくなるまでの様子が描かれます。航路上に設置されていた「浮遊機雷」についても、場所がタウト星の手前の空域であるという重要ポイントであるだけに、非常に説得力があるものでした。
14人目の仲間であるボギーが完全な状態となり、彼らは意気揚々と、目の前に迫ったククトの衛星「タウト星」へと向かいます。

■ここまで3話続いた短篇と比べると展開に派手さはありませんが、全キャラをバランスよく配置した正攻法のエピソードであったと言えます。スコット曰く「14人目の仲間、いや、それ以上の存在」であるコンピューターのボギーを中心に配置し、カチュアとフレッドが事態解決に奔走するストーリーはオリジナルシリーズ前半を彷彿とさせる丁寧な作りでした。特に終始ボギーに愛情を持って接するカチュアの描写は光っており、ボギーを人間に見立てた扱いをするところには彼女のキャラクターがよくあらわれていました。ファン納得の描写と言えるでしょう。
■度重なるボギーの不調によって疑心暗鬼になった子供達(主にスコット、ケンツ)がすべての警告をボギーのエラーとして処理し、その結果あとで思わぬしっぺ返しを食う…というのが今回の話でした。なんとなく「クレームを適当に片付けていたらあとでまとめて返ってくる」といった、サラリーマンのクレーム処理における教訓的エピソードだなあ、と感じたのは私だけでしょうか。
■たとえボギーが老朽化していても悪いところを直せば使えると主張し、愛情を持って彼女?に接するカチュアの行動には、ある種のエコロジー的なメッセージが込められているというのは考え過ぎでしょうか。コンピューターによってすべてが自動化された今の時代、自分達の与り知らぬところで思わぬ事態が発生しているかもしれない…というのが今回のエピソードに込められたテーマだったと思います。いずれにせよ、日常ボギーをオペレートする機会がいちばん多いのはフレッドかカチュアであるわけで、今回の配役は適切なものです。例によって道化役を演じるのがスコットである点については(そのオーバーな表情を含めて)いくらか食傷気味ではありますが…。
■数字の「1」と小文字の「L」を間違えてプログラムしたことによる誤作動…というのは、バイファムの物語の舞台である2058年という時代では勿論のこと、現在でもさすがにあり得ないであろう、リアルさには欠けるオチです。しかし、もし小中学生に相当する年齢の子供達がこのエピソードを見た場合、「あっ、なるほどなるほど」と実感することができる、極めて分かりやすいオチであることは事実です。この回に登場する「デコイ」と「デカい」、そして「歪み」と「重み」といった非常に分かりやすい日本語の掛け言葉と併せて、この第18話は「13」という作品の中で唯一、オリジナルシリーズのファンではなく、新しい世代のファンをもターゲットにして書かれたエピソードなのではないかと思います。このようなエピソードがあってこそ、視聴者である子供達は作品から何かを学び取って成長していくことができるのでしょう。
■今回は細かい部分の演出が冴えていました。整備マニュアルに書かれた単語の意味が分からずに砲台の整備をおろそかにするケンツ、シャロンのイチゴパンツ(平野氏こだわりの一品)をくわえようとするメリー、カルシウム不足を心配してカチュアにミルクを持ってくるジミー(人間はカルシウム不足だとイライラしやすくなります。念のため)など、随所にこだわりのシーンが見られました。それらの中でも、フレッドがボギーの修理中、かつてロディがコーヒーの飲み過ぎでアレルギーを起こしたことがある…という裏話を暴露するシーンは、オリジナルシリーズ3話でロディがネコの尻尾をひっぱって遊んでいた話を暴露するシーンに言い回しやシチュエーションが酷似しており、オリジナルシリーズを知るファンは思わずニヤッとしてしまう作りになっています。ちなみにオリジナルシリーズ第3話もこの回と同じ平野氏の脚本。この辺の氏のこだわりはファンにとって大変満足のいくものです。
■冒頭でマルロとルチーナが二人でしていた「ダルマさんが転んだ」は、後半の機雷除去のシーンの伏線になっています。バイファムで機雷というのは初めての登場ですが、たしかヤマトでも似たようなシーンがありましたね。
■第13話以来戦闘シーンでの出番のなかったバイファムとネオファムが久々の出撃。また、今回は劇中で「デコイ」と称される囮のブースターも登場。オリジナルシリーズでは第13話でRV用の射撃ターゲットとして登場したメカですが、今回は機雷を引きつける重要な小道具として使われました。デコイ=囮という意味で、ピーピングトムに近いネーミングというところでしょうか。
■ケンツが持参したマニュアルの単語の意味が分からずに顔を引きつらせるジミーの表情、今までにないものでした。キャラのイメージを壊すほどではなかったですが、なんだか変。
■オリジナルシリーズのBGMが非常に多かったのが今回の特徴です。「13」になってから使われたことがなかった曲「おびえ」が初めて使われた上、戦闘シーンは(ラストを除き)オリジナルシリーズBGMのオンパレードで、ドラマ自体の展開と合わせてかなりオリジナルシリーズに近い雰囲気でした。音だけ聞いてるとオリジナルシリーズの1エピソード、という雰囲気です。また、カチュアがブリッジでフレッドに起こされるシーンでのBGM「ほほえみの詩」、ファンには音楽集でおなじみの曲ですが、本篇ではオリジナルシリーズ第26話以来久々の登場でした。
■重箱の隅つつきですが、「ボギー」のスペル、画面で「BOGY」になってました。いいのかな?


[ トップページ ]