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第1話
「再び13人!」

1998年03月21日放映


オリジナルシリーズの総集篇。第1〜21話までに相当するストーリーのダイジェストで、約3割が新作カット(音声は新録音)。

実に13年ぶりの新作となった新シリーズ「バイファム13」。視聴者の多くは物語の内容に関してほとんど知識をもたないまま放映に臨むことになりました。オリジナルシリーズ第22〜26話に相当する「13」の開始に先立ち、この第1話は総集篇というスタイルで、オリジナルシリーズ第1〜21話までのエピソードを13人の視点から振り返るという内容になっています。

さて、この「13」第1話の脚本・演出・絵コンテはアミノテツロー氏。氏はオリジナルシリーズでも演出・絵コンテを担当されており、いわばバイファムを知り尽くしたスタッフによる新シリーズの導入篇ということになります。

物語は第1話のロディ登場シーンから始まり、第21話のラストシーンまで、ほぼ時系列通りに進行します。オリジナルシリーズの映像を軸に新作映像を交えるという構成は異色のものですが、ここで注目すべきなのは、オリジナルシリーズではロディ・フレッド・ペンチの3人しか描かれなかった脱出劇が、この「再び13人!」では彼ら以外の子供達が避難するシーンも新作カットとして追加されていることです。アストロゲーターの襲撃を知らずに音楽を聴いているスコット、そんな彼に避難するよう促すクレア。空港を走るマキ、シャロン。砂場で遊んでいるところを迎えにきた軍人によって連れて行かれるマルロとルチーナ、そしてその後の第2ステーションではカチュアとジミーが救命カプセルに避難するまでの様子、またベルウィック星のシーンではバーツがディルファムに乗るまでの過程が描かれるなど、13人が戦火に巻き込まれていく過程が新作映像によって描かれています。これらのシーンにおいても、例えばマルロとルチーナが取り残されているシチュエーションはオリジナルシリーズ最終回の「ママ探したのよ、でもてっきりパパと避難したものと…」という母親のセリフと食い違わないよう配慮されていますし、バーツがディルファムを入手するシークエンスにおいては、ディルファムが左足に被弾するシーン(第4話でバーツの乗るディルファムの左足が折れて転倒するシーンに繋がる)、またバーツが砲撃に巻き込まれて気絶する様子(第6話の「しばらくはぶっ倒れてたらしい」というセリフに繋がる)など、オリジナルシリーズの展開とリンクするシーンが続々と登場します。旧映像と新作画の融合という映像面での違いもあってこれらのシーンへの評価は分かれるところでしょうが、既に13人のキャラクターが視聴者に認知されているが故に可能だった展開であるという意味で、オリジナルシリーズを知るアミノテツロー氏を起用した効果が存分に発揮されたこだわりの演出だったと言えます。

また、サブタイトル「再び13人!」が表す通り、この総集篇はあくまで13人が中心となって物語が展開し、オリジナルシリーズでストーリーの軸となっていた、戦争に至る背景・大人達の苦悩といったシビアな世界観はほとんど描かれません。これは「13」というシリーズを通してのコンセプトであり、この第1話ではその違いを(曖昧な形ながらも)視聴者に提示する役目を担っていたものと思われます。大人達の視点から描かれていたそれらのシーンはすべて13人のうち誰かの視点から描かれ直す形となりますが、中でも象徴的だったのは、Bパートでジミーが物語のナレーションを務めたことでしょう。口数が少なく無口な彼がこのような役割を担ったことは多少なりとも違和感のある部分ですが、それでも13人を均等に描くというコンセプトからすると非常にユニークな試みであったと評価できます。

…このあと様々な物議を醸すことになる「バイファム13」。が、最終的にこのシリーズが生み出したエピソードの内容はともかくとして、この第1話はオリジナルシリーズのエッセンスと新シリーズのコンセプトを極めて高い次元で融合させた「完璧な」総集篇であったと思います。「新シリーズの前フリとなるように、第1〜21話を30分でまとめるように」と指示された場合、これ以上のものを作るのは極めて困難でしょう。
15年の時を超えて再びバイファムに巡り会った視聴者に、13人が健在であることをアピールしたこの「再び13人!」。「13」というシリーズが目指したもの(=目指すべきだったもの)が凝縮された、隠れた名作であると思います。

■「バイファム」というシリーズの中で総集篇に相当するエピソードはオリジナルシリーズの第24・25話、OVAの第1〜2巻、そしてLP「金曜劇場」がありますが、そのいずれもが13人(またはそのうちの数人)が過去の出来事を回想する、または回想するためのイベントが起こるというスタイルを取っていました。多少辻褄が合わない箇所はあるものの、その総集篇そのものが物語の一部であるというコンセプトで制作されていたわけですが、この「13」第1話はそれらと異なり、特定のキャラクターの視点にこだわらない、純粋な意味での総集篇として描かれています。オリジナルシリーズのフィルムの合間に新作画を織り込み、新たにアフレコを行うという大胆な構成により、この第1話は他の総集篇とは一線を画する内容となっています。
■21話分の物語をコンパクトにまとめるために、この回は個々のイベントないしエピソードはほとんど省略されています。その中で比較的力を入れて描かれたのは、「僕達」が13人である点、カチュアがククトニアンである点、そしてリフレイドストーンの存在です。「13」というシリーズがタウト星に着くまでの短期間の物語であることを考慮すると、限りなくポイントを絞り込んだこの演出は極めて妥当だったと思われます。
■この回のアバンタイトルは本篇とはリンクせず、第1〜21話のシーンから独自に抽出した内容。第7話管制室内のスコット&マキ&クレア&ケイト→第6話水浴びシーンのロディ&バーツ→第8話敵襲中のフレッド&ペンチ&クレア&ルチーナ→第8話シャワーシーンでのシャロン&ケンツ→第7話戦闘後のジミー&カチュア→第7話電車ごっこ中のマルロ&ルチーナ&ケンツと、わずか十数秒程度の間に13人+ケイトさんのフルメンバーを登場させるという「曲芸」を見事に成功させています。地味ながらも秀逸なアバンだと思います。
■アミノテツロー氏による演出の中で非常に目立つのが、スコットがマイクを手に「僕達13人…」と繰り返し呟くシーン。計6回繰り返されるこのカットは、まったく同じアングルのカットでありながら前3回がオリジナルシリーズの流用、後ろ3回が新作カットであるというこだわりのシーン。うっかりしていると見過ごしかねない箇所にまで手間をかける制作姿勢には脱帽です。
■この回セリフがあったキャラクターのうち、唯一の新キャラ?と言えるのが、砂遊びをしていたマルロとルチーナを連れに来た地球軍の兵士。マンガ的なリアクションは多少なりとも気になるところですが、まだ許容範囲内といったところでしょうか。ちなみに声優さんはのちの「双子の赤ちゃん&ラピス篇」でククト軍の士官バリルを演じる吉田孝氏。余談ながらこの第1話のアフレコは実際には第2話の後に行われたとのことで、声優さんにも多少の慣れがあったものと思われます。
■バーツの乗るディルファムとARVジャーゴの戦闘シーンは、オリジナルシリーズ第4〜9話のフィルムを繋ぎ合わせたもの。アミノテツロー氏による異常なまでの凝り様により、ほとんど新作カットがない状況で新たな戦闘シーンを描くことに成功しています。オリジナルシリーズ第9話「雷鳴の中の敵襲!僕たちだけで戦うんだ!」における戦闘シーンの映像を流用することを前提に雨を降らせるなど、細かい工夫も見逃せません。
■この回はオリジナルシリーズのBGMを主体としながらも、「13」の新BGM2曲が使用されています。そのいずれもがその後の「13」の物語においてベーシックに用いられる曲です。
■オリジナルシリーズでは、ジミーがいつ両親の「死」を知ったのかは明らかになっていません。オリジナルシリーズ第11話の時点では彼は両親の死を知らず、一方その後の第42話の時点では既に知っている、という演出があるだけで彼が知るまでの過程は一切描かれていないのです。あまり細かい整合性は追求されていないという見方もありますが、実はジミーは両親の「死」を早いうちから知っていたと解釈できる演出も存在し(オリジナルシリーズ第11話の解説参照)、視聴者によって解釈が異なる部分です。この「13」第1話では、ジミーがこの時点で両親の死を知らないことを前提として演出されており、オリジナルシリーズにあった微妙なニュアンスが一切失われてしまっていることは少々残念です。

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