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第45話
「とっておきの贈物」

1984年09月01日放映


地球軍に指定された合流地点に向かうジェダのシャトル。船内ではルチーナの誕生パーティーが催され、ケンツとジミーもそれに便乗して誕生祝いを受けていた。一方依然地球行きを迷っているカチュア、彼女を気遣うロディ。その時ククト軍のアイゼル艦隊の総攻撃が始まり、迎撃に出たロディ達は窮地に陥ってしまう。しかしそこへ地球軍が救援に駆けつけ、危機の去ったシャトルは合流地点に向かう。

最初に一言「絵が荒れてます」。…まあそれは仕方ないとしても、一般に星山氏が脚本を担当された話には、時として物語構成上明らかに「繋ぎ」とみられる回があるのがひとつの特徴です。これは氏がシリーズ構成を手掛けておられる事に起因すると思われますが、「次に控えた重要なエピソードを強調するためにその直前の話は敢えてお膳立てに徹しよう」、星山氏のそういう意図が見え隠れする回が「バイファム」を通して何話かあります。銀河漂流がスタートする直前の第12話や「カチュアを撃つな!」の前の第40話がそうですし、最終回のひとつ手前であるこの第45話もそのひとつです。もっともこの回描かれた内容はそのどれもが最終回への伏線であったり、或いはこれまでのストーリーの結末であったりするわけですが、全体としてまとまりがない話になってしまった事は否定できません。ある意味最終回とペアに扱われるべき話なんですけどねぇ。

さて、この回は「あの」最終回の大いなる前座であると同時に、物語のひとつのクライマックスであった第44話のあとを受けて最終回へのスムーズな橋渡しをしなければいけないという極めて特殊なポジションにあります。ストーリー上の大きなイベントとしては「ジェダのシャトルが和平会談のために地球軍とようやく合流」という展開を描く必要があるわけですが、ここであまり盛り上げすぎると次の第46話の印象が弱くなってしまいます。結果的にそんな心配が無用であったことはご承知の通りですが、制作時においてはそのような懸念があったとしても不思議ではないでしょう。
そんな中で、この回は「ルチーナ・ケンツ・ジミーのお誕生会」という極めて能天気な(失礼)、そして最終回とは異なるベクトル上での子供達が描かれることになりました(ここまで旅をしてきて子供達の誕生日らしきイベントが一切なかったのも不思議ですが、それは言わないことにしましょう)。ルチーナの誕生会にケンツ・ジミーが便乗する形で行われた誕生会には子供達全員のほかジェダやデュボアも駆けつけ、プレゼント交換などが盛大に行われます(場所がシャトルの一室というシチュエーションのせいか、ジェイナスにいる時よりも画面が多少息苦しく感じられます)。これらのシーンは13人の中でもいわゆる中堅〜年少組が主体となっており、年長組はクレアやマキを除きほとんど目立ちません。スコットやバーツがこれだけ目立たないのは全篇を通して見た時非常に珍しいと言えます。

さてこうしたお誕生会の最中、前回撤退したククト政府軍が再び彼らのシャトルに迫ります。「前回は血迷ったミューラアに邪魔されたが…」とか言いながらアイゼルが再び登場したのにはなんともびっくりでした。この前の第44話でのミューラアの「ククトニアンには地球を侵略する意思がない云々」のセリフ同様、必要な役割を演じるべきキャラクターが存在しないために最もそれに近い立場のキャラクターを無理矢理あてはめているという感じです。物語も終盤になってつじつまが合わなくなりはじめ、制作側がストーリーを前に進めるためにアップアップしている様子が伝わってきます。
そして始まる戦闘。次の第46話には一切戦闘シーンがないため、ロディ達がRVに乗って戦闘をするというのはこの回が最後ということになります。で、案の定というかロディ達は大苦戦。ネオファムとトゥランファムは敵の攻撃によってスリングパニアー「だけ」が吹き飛ばされます(ご都合ですねぇ)。最終的には地球軍の大部隊が応援にやって来てめでたしめでたし、という展開です。

この回描かれた「誕生会」および「最後の戦闘」というエピソードによって彼らは仲間との繋がりを再認識し、信頼をより深めます。ジミーから手渡された時には放り出してしまった「ギャンザーのしっぽ」を手にしたルチーナ、空薬莢のお返しとしてジミーからハーモニカを受け取るケンツ。そしてここまで毎話のように描かれてきたククト軍との戦闘はこの回をもって終了し、いよいよ物語は地球行きを悩むカチュアを中心に「本来のバイファム」としてのクライマックスを迎えます。

■この回は前述の通りお誕生会中心のストーリーですが、むしろポイントとなるのはここにきて地球に行くことを迷っているカチュアの描写、そしてケンツとジミーの会話ということになります。お誕生会のシーンなどではそれほど目立たないものの、カチュアの表情だけを追って見てみるのもこの第45話のひとつの鑑賞の仕方ではないでしょうか。
■この回が年少組を中心とした物語となっているのは、次の最終回がカチュアを中心にした年長組の物語として構成されていたからでしょう。年長組の中でもクレアやマキの出番はそれなりにありますが、あくまで年少組を引きたてるための役回りが主です。また年少組でもこの回ほとんど出番がなかったマルロについては次の第46話で母親と会話する場面があるなど、この辺のバランスの取り方には星山氏ならではのキャラへの思い入れが感じられます。
■この第45話のシナリオの初期稿では、カチュアに地球行きを勧めながらロディが紙飛行機を飛ばす、というシチュエーションがあったと言われています。「たら」「れば」は禁句ですが、このシーンが存在していればこの第45話はその前後を繋ぐ必要不可欠な回になっていたはずで、第46話のラストシーンに直接繋がるはずだったこのシーンが映像化されなかったのは悔やまれるところです。
■この回明らかになったルチーナ、ケンツ、ジミーの誕生日は必ずしも本来の設定に忠実なものではありません。要するに演出の都合上誕生日をくっつけられただけ…ということですね。もともとバイファムの物語自体が時制にはそれほどこだわっていない上、本放送の時点ではキャラの誕生日の設定はきちんと煮詰まっていなかったはずなのである意味仕方がないのですが、画面からもご都合的な雰囲気が感じ取れるのは少々残念です。全篇を通じてやたらと子供達による状況説明的なセリフが多く、彼らによる説明がなければ話が前に進まない苦しい展開であることが見て取れます。
■画面上ではほんの一瞬で目立ちませんが、この回はARVルザルガの隠し武器である頭部ミサイルが使用されるシーンがみられます。ちょっとマニアック。


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