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第42話
「パパ!一瞬の再会」

1984年08月11日放映


ようやく両親のいる収容所が判明して喜ぶ子供達。地球軍の進攻がいちはやく始まり、ロディ達は加勢に向かう。ククト軍の攻撃を退け、地球人捕虜は無事救出されてシャトルに搭乗した。避難する地球人捕虜の中に父親の姿を見つけ、シャトルに駆け出すクレア。しかしあと一歩というところで父親の乗ったシャトルは飛び立っていってしまった。

ここまでエピソード主体で前へ前へと走ってきたバイファムの物語もいよいよ物語の完結に向けての「着地点」を模索し始めたようで、この回からはその証と見られる演出が劇中に散見されるようになります。両親との再会がいよいよ目前に迫り、両親と顔を合わせた時一体どういう表情をしたらいいんだろう、どんな事を話せばいいんだろうとワクワクし始める子供達。この回の「枕投げ」そして「パパにあえる ママにあえる」は少々オーバーな感情表現ながらも、これまで戦火をくぐり抜けて来た彼らの感情表現としてはちょうどよいくらいなのかもしれません。
その一方、最終的にカチュアは他のメンバーと一緒に地球に行くのか?それとも別の道を歩むのか?という問題がこの回を境としていよいよ表に出始めます。これは言うまでもなく最終回への伏線でありますが、これは前の第41話でのミューラアとの会話が基点となっており、彼女にとってミューラアとの出会いが大きな転機となったことが窺えます。

…ジェダからの情報をもとに地球人のいる収容所に向かう13人。ちょうどその時、地球軍がつい先程収容所に降下し守備隊と戦闘に入ったという連絡が入ります。地球人の捕虜を脱出させるため戦う地球軍。しかし地球軍のRVは一機、また一機と撃破されていきます。「これまでか…」と呟くシャトルの機長。そこに登場するのがロディ達。「バイファムだ!トゥランファムもいる!」「まさに、奇跡だ…」。彼らの加勢で形勢は逆転し、地球人の捕虜を乗せたシャトルは発進の体勢に入ります。
そんな中、クレアは父親(バーブランド大佐)がシャトルに乗り込むのを目撃します。父親の名を呼びながらシャトルに向かって走るクレア、それに気付かない父、そしてシャトルの扉が閉まったその瞬間、ついに父は走ってくる娘の姿に気付きます。しかし…。

この回のサブタイトルは「パパ!一瞬の再会」。このサブタイトルは、「13」も含めたバイファム全話の中で個人的に最も優れたサブタイトルではないかと思います。それはサブタイトル中の「パパ」が一体誰の父親を指しているのかを最後の最後まで視聴者に予測させないものだったからです。これまでの旅の中で13人の母親役としての役割を担ってきたクレア、彼女は父親の姿を発見するまでいつも通りの役割を演じており、戦闘シーンではバズーカでARVを破壊するアクションさえ見せています。そんな大人顔負けの活躍をしていた彼女が父親の姿を見掛けた瞬間14歳の少女らしい姿に戻ってしまう。彼らの中では年長者であるクレアもまだ子供であり、女の子なんだということを強烈に視聴者に印象づけたこの対比こそがこの回最大のポイントであり、名エピソードたらしめる所以ではないでしょうか。地面に突っ伏して涙を流すクレアを慰めるのが、彼女がいつも母親役を演じる相手であるマルロとルチーナであるという配役も絶妙です。
クレアが父親に気付いてからラストのシーンまでは画面では2分にも満たない短いシーンです。しかしこの2分弱の間に描かれたドラマはそれまでのどのシーンよりも密度の濃いものでした。父親の乗ったシャトルの扉が閉まる瞬間からラストのナレーションまでを一曲のBGMで繋いだ音楽面での演出も特筆されるべきでしょう。

「あと一歩、いや半歩だけ」遅れをとった子供たち。しかし彼らの願いがかなうのは目前に迫ってきました。そしてそれに伴い、カチュアの苦悩もよりいっそう深まることになります。

■サブタイトル中の「パパ」が誰の父親を指しているか視聴者に予測させなかったと書きましたが、別の意味でこの「パパ」がクレアの父親以外に考えられなかったこともまた事実です。13人の両親の中でこれまできちんとした形で画面に登場していたのはクレアの両親だけ(※母親は第19話の回想シーンで登場)である上、ここで初登場のキャラクターをキーに持ってくることは物語の流れの上で考えられないからです(この時点でキャラクターについて説明しているだけの余裕はないため)。そのことからもこの「パパ」がクレアの父親であったことは必然だったと言えます。しかし、それを逆手に取ったドラマ作りはさすがの一言に尽きるでしょう。
■収容所に降下してきた地球軍が用いていたRVはトゥランファムの迷彩タイプ。本放送当時ブームだったガンダムのMSVシリーズの影響が現れています。地球軍が降下した過程や前後の描写がどうにも甘い気もしますが、ここはドラマに焦点を絞る形で説明が省かれたと好意的に解釈しておきたいところです。
■「物語の完結に向けて」のこの回の展開のひとつとして、ジミーの両親に関するカチュアとのやりとりを忘れるわけにはいきません。ジミーに気遣って「早く両親に会えるといいわね」と言うカチュアに対し、彼は両親が亡くなっているのを既に知っていたと告白します。両親が亡くなったことをジミーがいつ知ったのかという問題はともかく、このシーンは最終回のジミーの行動に直接繋がる重要なやりとりです。
■リフレイドストーンを強奪して基地に戻ったミューラアは自分が任務を解かれたことを知り愕然とします。このあと「血が憎い」のセリフに代表されるミューラアの葛藤シーンが描かれるわけですが、次の第43話で「私に残された唯一の道はあのバイファムとやらを倒すことだ」などと言い始めるのはちょっといただけません。また、一時的にとは言えここで子供達がリフレイドストーンを放棄してしまったことについては、第1話冒頭から描かれてきた遺跡の「謎」に注目しながら番組を見ていた者にとっては少し辛いものがありました。リフレイドストーンの存在抜きでストーリーが進行するまでに物語が変化してしまっていたのは事実なのですが、個人的にはちょっと残念な部分ではあります。


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