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第29話
「タウト星脱出命令」

1984年05月12日放映


子供達はジェイナスをタウト星に接舷させ、かつて両親たちが捕われていた収容所で壁に書かれているメッセージを発見する。一方ロディは脱走した敵の士官と遭遇するが逃げられてしまう。タウト星を占拠したジェダ達は、接近してきたローデン艦隊を避けるように脱出していった。ローデンは子供達に対しククト星域から退去するよう通告してくるが、子供達は独力でククト星に進入するため準備を進める。だがそこにタウト星奪還を目指すククト軍の部隊が進攻してきた。

この第29話の位置付けはこの前後のストーリー展開からすると「休憩地点」みたいなもので、タウト星で両親に会うことができなかった13人が次の目的地であるククト星に向かう準備を整える様子を描いています。個々のエピソードを詰め込むという構成上ひとつの話としてのまとまりには欠けますが、両親達がククト星にいる可能性が高いことが判明→ミューラアとの初遭遇→地球軍からスリングパニアーを入手、とククト星篇に向けてのネタ振りが連続するほか、ジェダによって遺跡の大まかな謎が解明されるなどチェックポイントはたくさんある回です。

第28話での反乱が成功したことにより、タウト星はジェダ達リベラリストの手に落ちました。囚われの身となっていたロディとカチュアは無事ジェイナスに帰還したものの、両親がタウト星にいなかったと知った子供達は大きなショックを受けます。ジェイナスをタウト星に接舷させて両親達の足跡を探して回る子供達。両親達をはじめとする地球人捕虜が収容されていた部屋にやってきた彼らは、壁面にたくさんのメッセージが書かれていることを発見します。自分の両親が書いたメッセージがないか探して回る子供達。そしてルチーナの両親が残したメッセージが見つかります。「どんなことがあっても私たちがそばにいることを忘れないでね」…両親からのメッセージに壁にすがりついて号泣するルチーナ。他の子供達も彼女の姿に涙します。そう、彼らは文字通り「あと一歩」のところで両親との再会を逃してしまったのです。しかしこのメッセージの存在によって、彼らの両親が確実に生きており、現実に捕虜としてタウト星に連れて来られていたことが証明されたことになります(囚われた地球人の中に彼らの両親がいるという証明はここまで何一つなかったわけですから)。このことによって子供達の明確な目的が成立したわけで、そういった意味でもこのシーンが持つ意味は重要です。

両親達が囚われていた部屋を出たロディやバーツ、スコットらはジェダと会い、幾つかの新たなの情報を入手します。遺跡=リフレイドストーンは本来「植物蘇生作用」を持った機械でありながら、ククトのコンピューターを狂わせる力を発揮したために地球との全面戦争のプログラムが回避されたという事実がジェダの口から明らかになります。つまりリフレイドストーンは第23話でローデンが言った通り子供達にとっては「ガーディアン」だったわけです。そして子供達はジェダから、彼らの両親達がタウト星の親星である「ククト星」に連れて行かれたことを知ります。目と鼻の先にあるククト星に両親達がいることが判明して歓声を上げる子供達。これにより彼らの新たな目的地が決定しました。

そこへ接近してくる地球軍のローデン艦隊。「無用な戦いを避けるため」ジェダ達はタウト星を脱出し、ローデン率いる地球艦隊はククト星進攻のためにタウト星を前線基地として確保することを決定します。ローデン達の事情聴取からまもなくして戦線の後方へ移動するよう指示を受けるジェイナス。バーツの悪い予感の通り、民間人である彼らがククト星に行くことは認められませんでした。子供達は集まって話し合い、考えを巡らせます。あくまでもククト星に降下することを前提に地上用のRVオプション「スリングパニアー」の確保に走るロディ、バーツ達。
そして、そのタウト星には奪還を目指すククト軍の大艦隊が向かっていました。

■ローデンが子供達に遅れてタウト星に到着したのは、第23話での戦闘が長引いたせい…と考えるのが一般的でしょうが、ストーリー展開の必要上そうなってしまった面があることは否定できません。ローデン艦隊とジェイナスが第23話以降一緒に行動していたなら第27〜28話のエピソードが成立しないですからね(子供達の推測通りローデン側が故意に連絡を絶っていた可能性もありますが、劇中でそのことを証明する描写はありません)。
■再登場後のローデン大佐のキャラクターは第22〜23話と少し異なっている気がしますが、上官からの命令を消化するのに懸命なサラリーマン的な悲哀がよく出ている…ということで好意的に解釈しておきたいところです。それにしても開口一番「スコット君か。元気そうで何よりだ」とは…他に言うことはないんかいな。
■ジェダは第3クールからのストーリー展開上やむを得ず登場する事になったキャラクターであるわけですが、ここでの彼の「軍人はどこも似たようなものです」といったセリフや「アニマル」発言など、彼を単なる「子供達の味方となる正義のククトニアン」にしなかった判断はさすがです。彼のこの思想は最終回における「(巡航速度になっても)地球軍に油断するな」などといったセリフにもきちんと反映されており、地味ながらもある意味きっちりキャラクター描写が徹底されていたことが分かります。
■この回ミューラアが初登場。ジェダ達リベラリストの捕虜となったものの脱走し、ロディ達の様子を偵察しながらタウト星脱出の機会を窺っている…というシチュエーションです。それにしても、彼がこの前の第28話の時点で一体何をしていたのか、そしてミューラア以外の政府軍捕虜…つまり前の第27〜28話で登場していた通訳達はこの第29話以降いったいどのような運命を辿ったのか、謎です。
■ククトの衛星であるはずのタウト星にジェイナスの形状とピッタリの港があるのはご愛嬌。たぶん形の似てるXu23a用の港を利用したんでしょう…と無理に納得しておきましょう。
■スリングパニアーのコンテナに表示されていた某スポンサーマーク(設定資料にもちゃんと描き方が載っている…)は、今思えば新メカを無理に投入してきたスポンサーへの精一杯の皮肉だったんでしょうね(どこかのアニメ誌では「21世紀には軍事産業に進出?」みたいな書かれ方がされていましたが、それは違うような気がします)。それにしても、スリングパニアーの機能を説明する軍士官のうさん臭いこと。ひょっとするとスポンサーサイドにモデルとなった人物がいるのではないか?という気がしないでもありません。
■ラストシーン、ロディ達がスリングパニアーを強奪するシーンでは珍しい彼らのパイロットスーツ姿が見られます。地球軍兵士に紛れ込むため…という意図なのかもしれませんが、RVに乗っている以上あまり変装しても意味がないような気がするんですけどねぇ。またこのシーンでは本来2人乗りのトゥランファムをケンツが一人で運用するというこれまた珍しいシーンがありますが、これは単純にガンナーが乗り込んでいなかっただけと解釈するのが妥当で、新作「13」の第13話でマキによって単独運用されたのとは意味合いが異なります。
■この回ちょっと気になるのはバーツの卑屈な態度。「マルロやルチーナは明日にでも親に会えると思ってるんだからな」というセリフは、第34話冒頭の「そいつは約束できねぇな」と合わせて考えると決しておかしくはないのですが、第6話ラストの「軍人は信用できない」的な考え方が露骨に復活したような気がして少しばかり違和感がないでもありません(単にイライラしているようにも解釈できます)。少なくとも第22〜23話では多少なりとも軍人達の考え方にも理解を示していたわけですから、もう少し穏やかな描写であるか、あるいは何らかの伏線があってよいと思うのですが。


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