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第22話
「ジェイナス応答せよ!! 地球軍からの通信」

1984年03月23日放映


下着類の不足に頭を悩ませるクレア達。そこへ地球軍のローデン艦隊からの通信が入る。子供達だけであることを隠すためにスコットが将校に変装して通信に臨むが、フレッドがカメラを操作ミスしたことで結局バレてしまう。タウト星行きを中止させようとジェイナスに乗り込んできたローデン達軍人だったが子供達の決意の固さにうたれ、後方に補給物資を要請した上で子供達の行動を支援してくれることになった。

これまで子供達だけで旅をしてきたジェイナスに大人、しかも軍人が合流するというのは、バイファムという物語にとって大きな転機でした。特にこの回の冒頭は駆逐艦レーガン内での交信シーンから物語が始まっており、それまでの子供達だけの物語に慣れ親しんでいた視聴者はこの導入部分に非常に驚いたことでしょう。

タウト星に向かって航行を続けるジェイナスに、地球艦とおぼしき部隊からの通信が入ります。その内容は地球軍の暗号電文「ウナバラニカモメマウ」。どうやら相手はジェイナスの行動を不審に思い味方かどうかを確認するために合言葉を要求してきたようです。ケンツの知識が功を奏しこのコールサインを無事切り抜けた子供達ですが、続いてジェイナスの任務・行動についてのプライオリティコールを要求され、回答に窮することになります。
子供達だけで軍艦を動かしているのがバレるとタウト星への旅が続けられなくなると思い込み、強制送還、刑務所入りの可能性まで示唆するケンツ。子供達だけで考えると時としてとんでもない妄想が突っ走ってしまうことがありますが、このシーンはまさにそうでした。普段ケンツの発言に歯止めをかけるバーツまでもがケンツの発言を煽るかのような発言をするのですから手に負えません。この辺はストーリー展開の都合によるものか、若干バーツらしくない言動になっています。

追い詰められた子供達は地球軍を騙すことでなんとかこの場を切り抜けようとします。マキが出した案は、最年長者であるスコットを地球軍の将校姿(スコット曰く「ヘルベルト・G・フォンシュタイン」)に変装させるというもの。勿論変装ごときで大人、それも職業軍人を騙せるわけがないのですが、ここでのやりとりは視聴者にとって爆笑もの…いやいや、手に汗握る展開でした。惜しむらくはアバンタイトルによってその後の展開が視聴者にいち早く知れてしまっていたことでしょうか。
結局フレッドがカメラを誤操作したことにより彼らの芝居は見破られてしまいます。ジェイナスに急速接近してくる地球軍のRV。ジェイナスのブリッジに乗り込んできたローデン大佐はジェイナスを接収し彼らを保護すると子供達に告げます。反発する子供達。彼らは奪った銃をローデン達に向け翻意するよう訴えますが、ローデンは悠然と構え聞く耳を持ちません。
しかしククト軍の中継基地を破壊したのが彼らだと知ったローデンはそれまでの態度を一変させ、ジェイナスに物資を補給することを約束します。喜ぶ子供達。13人はタウト星への旅を続けることを許可されたのでした。

…と、こんな調子で、子供達の旅はこれからも続いていくことになりました。ただ彼ら13人とローデンの間のやりとりは、奥歯に物が挟まったかのような内容であったことは否めません。それは「子供たちだけでタウト星に行って具体的にどのような方法で両親を救出するのか」という、普通なら指摘をして当然のポイントにローデンが一切触れなかったことにあります。具体的な方策がないことをローデン達に指摘されれば子供達も彼らに従わざるを得なかったはずなのに、ローデンはそれをしなかった。子供達に感情移入して観ると別に不自然な行動ではないのですが、ローデン側の視点で見れば彼の決断した内容やそこに至る過程はちょっと…と思わないでもありません。ただこの矛盾点はスタッフもよく分かっていたはずであり、第23話ではバーツ・ロディ・マキの3人によって(あくまでも形だけですが)救出作戦が練られる一方、実際にタウト星に到着した第27話ではシリーズ最大の大博打=「両親を救出するという目的を、捕虜になったロディを救出するという目的にすり替える」という展開が用意されることになります。

そしてジェイナスはローデン艦隊と合流し、物語は「バイファム」のひとつの最終回である第23話へと続いていくことになります。

■ローデンはもともと番組打ち切りのために急遽用意されたキャラクターだそうで、当初の役割は子供達を救出して地球に連れて帰る、というものでした。番組延長が決定したことにより彼の役割は子供達がタウト星に行くのを認める、という正反対の行動に出るわけですが、ここで子供達を当時のバイファムファン、ローデンをスポンサーサイドと置き換えると、当時の番組打切り回避の流れと重複する部分があって面白いです。
「お願いです、番組を打ち切らないで下さい。放送を続けさせて下さい!」
「視聴率が上がるかどうかは分からんが、時間帯を変えて放送を継続しよう。私もまだこの番組を打ち切るには惜しいのだよ」
ほら、ぴったりでしょ。
■この回新型RVトゥランファムが(ちらっと)初登場。実際に戦闘に参加するのは次の第23話ですが、この時点で既に第3クール以降に向けての伏線が張られていることが分かります。
■下着を作っている女性陣のところへスコットがやって来るというくだりが冒頭にあります。この時のスコットのキャラクターは前の第21話が反映されたものであり、目立たないながらもユニークなシーンです。下着を作っている場を見られて顔を赤らめる女性陣もカワイイです。特にシリーズを通してマキ、カチュアがそういう表情を見せるのは珍しいですね。
■駆逐艦レーガンのブリッジにおいて、「クラウド」という名称のメインコンピュータが登場します。ジェイナスでいうボギーに相当する役割ですが、男性の声であることもありかなり印象は異なります(クラウドという名称の由来は不明)。またこの回のAパート、電文やりとりにおけるボギーのリアリティはなかなかのものです。
■ジェイナスとローデン艦隊が合流するこの第22話は、新作「13」の第2話で新たに描き直される形になりました。「13」第2話での迫力あるメカ戦は「13」を代表するであろう名シーンですが、この旧第22話独自のエピソードであるスコットの変装や、ジェイナスのブリッジでローデン達軍人と13人が対峙するシーンなど、キャラを中心とした描写はバイファムの物語に欠かせないエピソードと言えるでしょう。また「13」で登場したローデンが非常に物分かりのいい(ある意味軍人らしくない)軍人として描かれているのに対し、この旧作22話のローデンがいわゆる職業軍人的な、任務に忠実な人物として描かれている点も注目すべきところです(もっとも第29話で再登場した際は若干違うキャラクターになってしまっているのですが…)。
■この回で描かれた「子供達だけであることを見破られないために偽装する」というシチュエーションは、のちの「13」第7話「乗せる、乗せない!13人の大決断」でも似たシーンが登場します。このエピソードは明らかにこの第22話をモチーフにしたもので、地球軍の少年兵に変装するスコット、同じく少女兵に扮するクレアのほか、ケンツがムビオラルームから持ち出した戦争映画の音声を用いて大人(ホルテ)を騙そうとするなど手口が本格化?しています(最終的にこの作戦が失敗に終わることは言うまでもありません)。ちなみに脚本はどちらも星山氏ですが、この第22話に用意したアイデアを新作に当たって再び利用したというのが真相かもしれません。また冒頭で女性陣が下着を作るシーンはやはり「13」第3話で再登場するなど、この第22話は新作導入時のモチーフ的な役割を果たす回となりました。余談ながら「13」第2話のスコットのセリフの中に「(ジェイナスのメンバーが)僕達だけになって2週間になります」というセリフがあり、このエピソードが第22話のリメイク的役割であったことを考慮すると、ケイトが死亡した第16話から第21話までのエピソードは僅か2週間の間に起こった出来事だったことになります。


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