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第13話
「射撃訓練開始!恐怖の宇宙戦闘初体験!!」

1984年01月20日放映


徐々にRVのシミュレーションに慣れてきたバーツとロディは命綱をつけてRVで宇宙空間に飛び出す。射撃訓練をするために命綱を外してジェイナスから遠ざかる彼らだったが、そこへ敵のRVが襲来する。ケイトの必死の呼びかけの中、バーツが早まって発砲してしまったことにより本格的な戦闘に突入する。ネオファムが中破するも、パペットファイターで救援に出たマキや銃座に座ったシャロンの活躍もあり、敵は撃退されジェイナスは難を逃れることができた。

第1クールの最終話にあたるこの第13話は、「ようやく」と言ってもいいでしょう、主人公であるロディが主役メカであるバイファムを操縦してのRV戦を行うシーンが描かれます。いかにバイファムの物語のメインがメカアクションでないとは言え、当時の視聴者の多くはガンダム的なロボットアクションが描かれることを待ち望んでいたと言えます(おそらく)。そしてこの回のエピソードは単純に戦闘シーンの迫力だけでなく、そのドラマ性を取り上げた場合でも珠玉と言えるエピソードとなります。

第2ステーションを発って6日目。ジェイナスは地球へ向けて順調に航行を続けていました。ケイトは自室にこもり、遺跡の研究を続けます。コンピューターによる地質分析の結果、クレアド星が過去に核汚染されていたらしい事実が明らかになります。クレアドが異星人のものだったのではないかという疑いを持つ一方、ケイトはカチュアの母親が持っていた写真について考えを巡らせます。直接カチュアのもとへ赴き詳しい事情を聞こうとするケイト。自分が異星人ではないかと口にするカチュアの言葉を遮ったことからも、彼女はこの時点でカチュアの秘密についてひとつの確信を持っていたものと思われます。

一方その頃ロディとバーツはスコットに「船外活動」を行う許可を取りつけ、それぞれバイファムとネオファムに搭乗してジェイナスを発進します(カタパルト発進する際の「G」=重力の描写がリアル)。実際には彼らの目的はRVでの射撃訓練をすることにあったのですが、そんなことを「慎重派」のスコットに直接話せるわけがありません。密かに標的ブイを引っ張り出し、RVに装着していた船外作業用のワイヤーを外して射撃訓練を始めるロディ達。時を同じくしてペンチとシャロンがイチゴパンツの処遇を巡ってブリッジで言い争いを始めたこともあり、スコットはますます頭を痛める羽目になります。

しかしそこにアストロゲーターが襲来します。交戦の意志がないことを必死に呼びかけるケイトですが、当然のように応答はありません。2機のARVルザルガを出撃させてきたアストロゲーターに対し、バーツは制止を振り切って発砲してしまいます。その直後に敵ビームの直撃を食らい左腕を吹き飛ばされてしまうネオファム。必死にバーツの名を叫ぶペンチ。バーツがやられたと思ったロディは怒りに燃え、ARVとの戦闘に突入します。バイファムの攻撃をかわしジェイナスに接近するルザルガを、砲座に座ったケンツ、シャロン達が必死に迎撃します。 ようやく出撃したマキのパペットファイターとの連携プレイによって1機目のルザルガはシャロンに撃破され、そしてもう1機は何とか意識を取り戻したバーツとロディの攻撃によって何とか撃墜されます。ARVは爆発し、ジェイナスの危機は去りました。歓声を上げる子供達。
その直後、レーダーに捉えられる浮遊物体。それは大破したアストロゲーターの難破船でした。僕達もいつかこうなってしまうのか?自分達の身を守るためにアストロゲーターと戦わなくてはならない、その現実に苦悩するケイト…。

…この話はバイファムという物語全体を見た時それほど目立つエピソードではありません。しかし物語としての完成度は非常に高く、第1クールの最後を飾るのにふさわしい回であると言えます。特に戦闘シーンのあとに破壊された敵艦を描くというバランスのとれた描写には、この回がまるで独立したひとつの物語であるかのような雰囲気さえ漂っています。何故彼らは戦わなければならないのか?一歩間違えば単にドンパチをやっているだけに見えかねない戦闘シーンにシリーズを通して意味合いを持たせるために、この回は非常に大きな役割を果たしていると言えます。
そしてこのエピソードを持って第1クールは完結し、物語はいよいよ前半のクライマックスであるエピソード=第14〜17話へと移っていくことになります。

■この回のひとつの見所は細かいセリフ回しと掛け合いにあります。初めて宇宙空間に出たロディの「広い…まるで吸い込まれそうだ…」というセリフや、有名なバーツの「行きまーす!」、そしてマキの「でけェ〜!」「寒そう…」に至るまで、印象的な言いまわしやセリフが続出します。特に目の前に出現したARVを見て「怖い」とか「憎い」ではなく「でけェ〜!」と叫び、ラストでは破壊された敵船を見て一言「寒そう…」と呟くマキのセリフは非常に印象に残ります。ここまでイマイチ描き方が定まっていなかったマキというキャラのその後の描き方を決定付けたシーンと言えます。
■パンツを穿く、穿かないを巡ってシャロンに突っかかるペンチのキャラクターは、これまで描かれてきた彼女のおとなしいイメージを払拭するものでした。このシーンでの彼女は潔癖症的なイメージが強調されているわけですが、この彼女達の掛け合いは次の第14話冒頭(詩を書いているペンチをシャロンがからかう)と対比することを前提とした構造となっています。また、砲座に座ってもなお「スースーするなぁ」と言っているシャロンがARVを目の前にして緊張のあまり砲撃ができなくなるという場面はこの回の「恐怖の宇宙戦闘初体験」を象徴するシーンとして出色です。
■マキがパペットファイターで出撃するのはこの回が初めて。RVが余っている中で敢えてパペットを選ばなくてもいいと思うんですが、こういう時にアシスト役を務めるのが彼女らしい選択ということで解釈しておきたいところです。
■スコットの「射撃訓練なんて僕は聞いていないぞ」の言葉に「でしょうね」と呟くクレア。幼なじみである彼ら2人の関係を的確に表現しているユニークなセリフです。
■この回の戦闘シーンではバーツの乗ったネオファムが左腕を吹き飛ばされます。バイファムの物語の中で、一行が使用していたRVが修復不可能な損傷を負うのは第32話で撃破されたトゥランファムを除きこの機体だけということになります。その後ネオファムの左腕を子供達だけで修復して運用したとは考えにくく、以後のストーリーで登場したネオファムは無傷の2機目だったという解釈が正しいところでしょう。もっとも、それなら第34話冒頭でジェイナスに残されていたもう1機のネオファムは何?という事になるのですが、まあそれはそれということで。
■バーツの「行きまーす!な〜んちゃって…うわっ!」のセリフは言うまでもなくガンダムのパロディ。この台詞が脚本の段階からあったのか演出レベルで付与されたものかは定かではありませんが、当時ガンダムブームの真っ只中だったファンにとってはツボにはまることこの上ないユニークなシーンでした。
■ARVルザルガがこの回初登場。完全な宇宙用の機体ということもあり、ベルウィック星篇で登場したARVとは違い宇宙空間での迫力ある戦闘を展開します。バイファムに登場したARVと言えば第1話から登場したウグのインパクトが強いですが、RV同士の戦闘シーンでの活躍度から見た場合は最終回直前の第45話まで登場したこのルザルガのほうがメジャーな機体であると言えます。
■この回個人的にものすごく違和感があったのは、ブリッジから避難する時にマルロが言ったセリフ「急いでますよっ」。なぜよりによって丁寧語?お前4歳児とちゃうんか?…いや、別にいいんですけどね。これ以外にもバーツがやられたと聞いたスコットの「ばかなことを」の一言は仲間に対してあまりにも冷たすぎるセリフだと思うんですけど、いかがなもんでしょうか。


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