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第9話
「雷鳴の中の敵襲・僕達だけで戦うんだ!」

1983年12月16日放映


ジワイメルウ基地からの入電がないことを焦ったスコットはひとり通信を試みる。しかし敵にその通信が傍受され、アゾレック基地に敵RVが襲来した。早まったケンツがバズーカを発射したことで敵は子供達の存在に気がつき、戦闘に突入する。ディルファムに乗り込んで初の実戦に臨むロディとバーツだったが、思うようにはいかず窮地に陥る。だが敵はマキやシャロンが出動させたRVの接近に驚いて退却し、ロディ達はあやうく難を逃れることができた。

物語構造は前の第8話と非常に良く似ていますが、この第9話ではRVで出撃したロディとバーツが実際に戦闘をする点が異なっています。これまでアストロゲーターから逃げ回るしかなかった彼らにとって、初めて自力でアストロゲーターを撃退することになる記念碑的なエピソードです。しかし彼らにとって初の実戦はホロ苦いものになります。

アストロゲーターとの前回の遭遇から1週間。ロディとバーツは相変わらずRVシミュレーションで訓練に励んでいます。最高レベルまで到達して自信を深めるロディ。彼らの態度にはいつ実戦になっても大丈夫、そんな姿勢が窺えます。
そんな中、ジワイメルウの軍司令部からの連絡が一向にないことに焦燥感を募らせるスコット。彼はバーツの忠告を半ば無視する形で、自らの判断で通信ボタンに指を伸ばします。必死にコールを続けるスコット。しかし司令部からの応答はなく、逆に通信に気付いたアストロゲーターがアゾレック基地に襲来します。雷鳴のとどろく中、なんとか前回同様アストロゲーターをやり過ごそうと息をひそめる子供達。しかしケンツはひとり物陰からARVに向かってバズーカの照準を定めます。案の定発射したバズーカは外れ、ケンツはARVに追われる羽目になります。ケンツを助けるため銃を持って飛び出していく子供達。四方からの銃撃にたじろぐ2機のジャーゴ。
そんな中、ロディとバーツはRVに搭乗し、敵を迎撃することを決意します。しかしいくらシミュレーションで最高レベルを経験したとはいえ、実戦はまるで勝手が違うものでした。2機のARVジャーゴの攻撃の前にバーツは被弾し、ロディのディルファムもあっという間に窮地に陥ってしまいます。覚悟を決めるロディ。絶体絶命のピンチです。
しかしそこにフレッド達が3機のディルファムを操って登場します。ひるんだスキをついて一機のジャーゴを撃破するロディ。パイロットを回収したもう一機のジャーゴはそのまま撤退し、ロディ達は危機を脱しました。

戦いが終わり、シミュレーションと実戦の差にショックを受けるロディとバーツ。そんなロディは目撃したARVパイロットの姿を思い浮かべていました。なぜとどめを刺さなかったのかと詰め寄るケンツを睨み付けるロディ。バーツの言う通り、彼らは殺し屋ではないのです。彼らが経験した「実戦との差」とは、単に戦力的なものだけではなく、敵を撃退することはイコール敵を殺す行為である事を認識したということにあったわけです。

アストロゲーターを撃退したとはいえ、ケイトとスコットは自分達のいるアゾレック基地が安全な場所でなくなったことを認識します。この事件は、次の第10話での彼らの行動決定に大きな影響を及ぼすことになります。

■放映開始から丁度2ヶ月が経過し、冒頭では物語背景を説明するナレーションが入ります。シリーズの後半ならナレーション=スコットという役回りになっているわけですが、この時点ではまだナレーションは冨田耕生氏でした。
■ここまでRVシミュレータで最高レベルまで進むほど操縦に習熟していたロディであっても、実際の戦闘ではうまくはいかない…という展開は、これまでの話の流れからするとむしろ当然と言えるでしょう。バーツからマニュアルを読むよう言われながら読まなかったロディは、実戦で同じシチュエーションに遭遇して窮地に陥ります。RVはそんなに簡単に乗りこなせるものじゃない=ロディやバーツは視聴者と何ら変わらない等身大の存在なんだ、というメッセージが伝わってくるような気がします。もっとも、ロディがエースパイロット的な活躍を見せる第3クールの展開によって、このあたりの制作側の配慮が無に帰した感があるのは仕方のないところでしょうか。
■フレッド、マキ、シャロンがディルファムを出動させるシーンでは、マキとシャロンがイグニッションを切るのに四苦八苦する一方、フレッドはきちんとディルファムを操縦しています。前の第8話での暴走事件からきちんと進歩の跡が見られる点がなかなかユニークな演出です。ちなみにフレッドがこの次に出撃するのは放映スケジュールで言うと実に半年以上も先の第41話「カチュアを撃つな!」ですが、この第8〜9話の時点ではRVを動かすことで精一杯だったフレッドはその第41話では兄に代わってバイファムを操縦し、逞しい表情を見せることになります。
■この回トラブルメーカーぶりを発揮するのはケンツ。冒頭では食料を持ち逃げしようとしてクレアに発見され「頭の黒いネズミ」呼ばわりされる(余談ながら、ケンツがソーセージを盗むこのシーンはOVA3巻冒頭でも再現されています)ほか、ジャーゴに先制攻撃をかけようとして失敗し、逆に追い掛け回される始末。四つんばいで走って逃げる彼の姿はいわゆる「マンガ表現」ですが、それなりにいい味を出しています。またその他のキャラではフライパンをフレッドの顔面にぶつけてしまうペンチや、ジャーゴが接近する中洗濯物を干しっぱなしにしていたことに気付いて慌てるシャロン、その彼女に対して「また洗わなきゃならないわね」と相槌を打つペンチなど、絶妙なズレっぷりが光るシーンが多いのもこの回の特徴です。バーツが「何呑気なこと言ってんだよ!」と怒るのも無理はありません。また洗濯物を手にして首をかしげるジャーゴの動きも味のあるユニークなシーンです。
■この回は「子供達が自力でRVを出撃させ敵を撃退した」というある意味記念とも言えるエピソードなのですが、ストーリー展開そのものは一見したところ散漫に見えます。ストーリー展開の柱となるキャラが決まっていないことに加え、ロディやバーツにしてもいいところばかりではなく、ラストシーンでは青ざめた表情をしている…というのがその原因です。そんな中シャロンについては、冒頭のシャワーシーンでの大胆さから中盤の洗濯物についてのヌケたやりとり、そして一転してディルファムに搭乗して出撃するという行動のあとは、「パンツを穿いていなかった」ことに気付いて基地内にさっさと引きかえすなど、ストーリーの要所要所で印象的な立ち回りを演じており、そのどれもが「彼女らしいズレっぷり」を醸し出しています。特に「初めて自力で敵を撃退する」というシリアスなシーンでの彼女のあっけらかんとした行動は、物語にいい意味でのスパイスとなっています。ある意味この回の主役であると見て間違いないところです。
■そんなケンツやシャロンと引きかえ、第6〜7話と物語の前面に登場していたケイトがこの回ではほとんど目立たなくなってしまっています。第8話以降画面狭しと動き回り始めた彼ら子供達に圧倒されている、といったところでしょうか。またそれに伴い、ロディのケイトに対する気持ちの描写もこの第8〜9話では一旦ストップしています。
■ジャーゴが左腕に装備しているビームガンには2種類あります。ひとつは腕先の砲身から出るメインの大口径ビーム、もうひとつはその周りから発射される6門の「カクカクビーム」です。ベルウィック星篇でのジャーゴの登場はこの回が最後となるわけですが、この回の登場シーンではそれらがきちんと描き込まれています。もともとこの回はキャラの作画に関しては整っているとは言い難いのですが(失礼)、このへんの細かいメカ描写や描き込みは必見です。ちなみに、のちにククト星篇などで活躍するフローティングタンクもこの回初登場しています。
■ジワイメルウ基地と連絡が取れたかどうか聞きに来るメンバーに対し「キミで○人目だ」と呟くスコット。彼の性格がよく表れたエピソードであり、第1クールでの彼のキャラクター形成に大きく寄与したと言えそうです。ただしこの回「キャプテンとしての」スコットの行動はそれほど重点を置いて描写されていません。「(通信を傍受された)僕の責任なんだ」とライフルを撃ち続けるシーンが目立つくらいで、率先してディルファムで出撃したロディ達に比べて弱々しいイメージがあるのも確かです。彼がキャプテンとしての地位を固めるのは次の第10話、ベルウィック星篇の事実上のラストエピソードでのことになります。


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